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サーフィン・五十嵐カノア25歳「僕はみんなのハッピーな様子を見るのが好き」 パリ五輪へ、“日本人史上初の快挙”の舞台裏
posted2022/10/24 06:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
AFLO
サーフィンの'24年パリ五輪出場権を懸けたISAワールドゲームズが、9月に米国カリフォルニア州ハンティントンビーチで行なわれ、東京五輪銀メダリストの五十嵐カノア(木下グループ)が初優勝を飾った。世界選手権に相当するこの大会を日本人が制したのは、男女を通じて史上初の快挙だ。
日本は五十嵐と村上舜(11位)、上山キアヌ久里朱(25位)の3人による男子団体でも初優勝し、優勝国に与えられるパリ五輪の追加出場枠1を獲得。個人資格による五輪出場権を獲得すれば最大3人の出場が可能となった。
「チームのために追加出場枠がほしかった。本当に特別な勝利。100%作戦通りにできて、ミッション・コンプリートという気持ちです」
「僕はみんなのハッピーな様子を見るのが好き」
開幕前から「今回は自分のことよりもチームが大事」と言い続けてきた五十嵐にとって、満願成就となる2冠達成だ。また、全競技を通じて日本のパリ五輪出場枠獲得第1号という三重の喜びでもあった。1回戦から決勝までの8ヒートすべて1位の完全優勝だった。会場のハンティントンビーチは生まれ育った“ホームブレイク”。日によって波のコンディションが大きく異なる難しいビーチの特徴を熟知しているとは言え、あらゆるコンディションを制した価値は大きい。決勝では15.96点の高得点をマーク。ボードを高々と掲げて笑顔でガッツポーズをした。
「仲間にアドバイスをシェアしてサポートしたい」と言い、会場近くにある自宅から試合に通うのではなく、チーム宿舎で生活を共にした。
「僕はみんなのハッピーな様子を見るのが好き。チームはファミリーなので、一緒に負けて一緒に勝つという考えです。ISAは大会日数が(1週間余りと)長いので、チームのリズムを使って金メダルに近づく大会でもあります」
今回のワールドゲームズの直前には、プロ最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)で自己最高のシーズン総合5位になり、「サーフィンがうまくなっている」と成長を実感していた。東京五輪では決勝で敗れて悔し涙を流しながらも、海に向かって感謝のおじぎをする姿が印象的だった五十嵐。頂点を目指すパリ五輪へ向け、最高のスタートを切った。