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YouTubeでバズった「忍者女子高生」泉ひかり26歳は今、なぜパルクールに励むのか「危険と思われる時期もあったけど」 

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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photograph byRyota Hasebe

posted2022/10/23 17:02

YouTubeでバズった「忍者女子高生」泉ひかり26歳は今、なぜパルクールに励むのか「危険と思われる時期もあったけど」<Number Web> photograph by Ryota Hasebe

YouTube動画で“バズった”経験を持つ泉ひかりは今、パルクールのアスリートとして活動している

 自由な動きに心を奪われ、公園の遊具で練習を始めた。当時は大会などなかったものの、日々の成長を楽しんでいたという。励まし合える仲間の存在も大きかったようだ。

「パルクールの人って、誰かに勝ちたいというより、自分のベストを尽くすことを考えるんです。だから、他の人がすごい技をやったりすると、すごく盛り上がります」

 そうした中で忍者女子高生役に抜てきされて注目度が上がると、テレビのスポーツ番組に出演。日々の努力で培った驚異的な身体能力を日本全国に知らしめた。近年は漫画「鬼滅の刃」の人気キャラに扮して縦横無尽に駆け回る動画を自身のYouTubeチャンネル「いずみのよりみち。」で配信。こちらの再生数も数百万回を誇る。

「この10年でいろんなことが進んで」

 女子高生が公園で練習を始めてから10年後。ビッグイベントが10月14日から3日間、東京都内で開かれた。第1回世界選手権。江東区の有明アーバンスポーツパークには38カ国・地域から97選手が集まった。「この10年でいろんなことが進んで、とうとう日本で世界各国から選手が集まった大会が開けるのは、喜びをしみじみ感じます」。雨もぱらついた難しいコンディションの中、スピードの予選を7位で通過した泉は大会を存分に楽しんでいた。

 実施された種目は「スピード」と「フリースタイル」。スピードは、大会ごとに変わるコースに設置された台や鉄棒などの障害物を越えながらタイムを競う。フリースタイルは、それらの障害物をうまく使って技の難度や出来栄えの良さを争う。余談だが、世界選手権用のコースをデザインしたフランス人のシャルル・ピエール氏はパルクール創始者の1人で、映画「YAMAKASI」にも出演。現在はFIGでパルクール委員長を務め、大会中は選手の様子を近くで見守っていた。

 泉は2種目とも出場。得意のスピードは表彰台まで0秒15及ばない35秒8の4位で、フリースタイルは上位8人による決勝進出を逃した。ワールドカップ(W杯)シリーズのスピードで世界ランク1位に輝いたこともある実績からすれば、悔しい結果。3位なら日本勢初の世界選手権メダリストとして歴史に名前を刻めた。それでも、競技後の表情は晴れ晴れとしていた。

「予選と比べて準決勝で3秒、決勝は5秒も縮まって、目標より5秒も短く走れたことはすごく満足しています。もっと体力があれば(後半で)ばてなかったと思うので、体力をつけたい」

 競技である以上、他人と競うのは避けられない。だが、パルクールが大切にする精神は、あくまでも自分の成長。それを感じられたからこそ、「満足」と言えた。

【次ページ】 「ひかりなら絶対にできる。なんでやらないの?」

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