村田諒太「王者の本棚」BACK NUMBER
『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』病で気付いた左脳の呪縛。機能を抑えて不安を減らそう。
text by
村田諒太Ryota Murata
photograph bySports Graphic Number
posted2022/10/19 07:00
『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー著 竹内薫訳 新潮文庫 737円
脳卒中になった女性脳科学者が、回復の過程における記録と発見をつづった『奇跡の脳』。著者のジル・ボルト・テイラーさんは37歳のときに脳卒中になり、左脳の一部機能に損傷を受けました。
「左脳のキャラクターは、あらゆるものを分類し、組織化し、記述し、判断し、批判的に分析する能力を誇っています。左脳はいつも熟慮と計算によってうまく立ち回ります」
彼女が完全主義者、クソ真面目とも表現する左脳がダメージを負ったことで逆に右脳の深淵をのぞくことになります。右脳と左脳の性質はまるで正反対。左脳からの支配が解かれ、彼女は涅槃の境地に入っていくという感覚を得たわけです。