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甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭・履正社が超名門化する一方で「甲子園は別のスポーツ」「廃部の道を…」公立校顧問らが語る“高校野球格差のリアル”
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byNanae Suzuki/Takeshi Shimizu
posted2022/10/03 11:00
センバツ優勝の大阪桐蔭と“普通の公立校”…枚方なぎさ高顧問である磯岡氏に現場のリアルを聞いた
「この秋に部員が20人超えているんは、私学を入れても152チーム中60チームぐらいしかないそうです」
30人超えてるのはもっと少ないそうだ。つまり、少数私立への一極集中が起きている。今夏の大阪府大会の参加校数は165校だが、近い将来、50校などということになりかねない。
公立校野球部は廃部の道をたどってしまいます
前述した磯岡は危機感を募らせている。
「私学から声がかからない、野球が好きな普通の中学生に公立の良さを知ってもらうしかない。大阪は私学の授業料無償化の影響もあり、公立校野球部は廃部の道をたどってしまいます」
昔はテレビをつけると野球中継があって、野球一択の時代だった。しかし、時が流れて最近は卓球、バドミントン、バレーボールが人気だそうだ。野球は用具も高価で、家族の負担も大きい。だからこそ、少年が野球をやりたい、という状況を作り出す努力と工夫が必要だ。
その生き残りの方策が――前述した「全国公立高等学校野球選手権大会」というわけだ。
2つか3つ、9回までさせてやりたいんです
磯岡がこの構想を考える原体験となったのは何か。それは牧野の監督時代、藤浪晋太郎がエースだった大阪桐蔭と夏の初戦に対戦。後の春夏連覇校に5回コールドで負けたことだという。
「すごいところと対戦出来て良かったですね、とメディアに言われましたけど、コールド負けして良かったなんてこれっぽっちも思いません(笑)。最後の試合は9回までやらしてあげたい」
磯岡によると、開催中の22年秋の大阪大会の1、2回戦では、全体の65.5パーセントがコールドゲーム(内39.3パーセントが5回コールド)だったという。
「高校最後の試合は入場行進なんてなくてもいい。ささやかなアナウンスはあったら嬉しいかも。大阪大会だけでもいい、2つか3つ、9回までさせてやりたいんです。
高校生の成長の場として部活動はかけがえのないもの。せっかく公立校の教員になったし、自分も高校野球に育ててもらった。単なる野球好きのおっさんで終わらないように、未来に続くようなことをしてやりたいんです」
そんな磯岡たちが取り組んでいる、公立校独自の取り組みとは――。#2ではその試行錯誤について記していく。
<#2につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。