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甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭・履正社が超名門化する一方で「甲子園は別のスポーツ」「廃部の道を…」公立校顧問らが語る“高校野球格差のリアル”
posted2022/10/03 11:00
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph by
Nanae Suzuki/Takeshi Shimizu
半年前、春のセンバツ大会期間中のこと。あるプロ野球チームのスカウトと雑談をしていて、彼が漏らした感想だ。
「例えば大阪桐蔭対智辯和歌山のような強豪私学同士の対戦や、超高校級のピッチャーとバッターの対決をファンは求めて楽しむ傾向にある。甲子園自体がイベント、お祭りになってるということ。
これはエンタメですよね。昔は頑張ってる高校生の姿を見たいという気持ちで観戦していた。最近の甲子園は“本当の甲子園”じゃないなと思っています」
あくまで、個人的な思い、と言って続ける。
「今の甲子園は形骸化してるように見えていて、本来の甲子園の良さが戻ってこないかなと思います。それはアイデンティティじゃないかと。地元の高校があって、そこを応援していると、もしかしたら甲子園に行くかもしれないと。そこで行っちゃったら、さらに地元が盛り上がる。47都道府県の49校がアイデンティティを持って参加する。
そこにお盆という季節感がマッチする。故郷に帰ってお墓参りをする時期に、郷愁をくすぐる仕組みが日本人の文化に合致していた。ここが高校野球の根本だと思うんですよ。そのはずなのに、盛り上がった形だけが残って、中身はすり替わってるとしか僕には見えない」
筆者もまったく同意見だった。もちろん、スカウトの仕事はプロで通用する選手を探すこと。地元を意識することなく、超高校級の投手と打者の対決を凝視するのだが……。
強者と弱者の二極化は止まらない
2022年夏の甲子園。大阪桐蔭の春夏連覇がなるか注目されたが準々決勝で敗退。優勝したのは仙台育英で、史上初めて白河の関を越えて、東北地方に栄冠をもたらした。
しかし一方で、地方大会を勝ち抜いてくる高校が偏りだしていて、初出場校が減っている。上位進出できる高校も限られている。事実、夏のベスト8進出校はほぼ甲子園常連校で、7校が私立の強豪だった。
甲子園で勝ち抜くには相応に優秀な選手が揃わないと難しい。大阪桐蔭の圧倒的なセンバツの優勝劇と、5人の140キロ投手を揃えた仙台育英の初優勝は顕著な例だ。一方で公立校はなかなか、甲子園にさえ出場することが困難になっている。強者と弱者の二極化は止まらない。私立はますます戦力を強大化させ、公立は部員減が進んで野球部そのものの存続が危ぶまれている。
特に大阪では大阪桐蔭と履正社という高校球界2大巨頭が君臨して関大北陽、東海大仰星など他の私学でさえ甲子園には遠い。府立の普通校にしたら夢でしかない。
8月下旬、夏の大会が終わって10日ほど経ったころ、ある大阪府立高校の顧問とのメールのやりとりの中で、こんなことを打ちあけられた。