- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭・履正社が超名門化する一方で「甲子園は別のスポーツ」「廃部の道を…」公立校顧問らが語る“高校野球格差のリアル”
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byNanae Suzuki/Takeshi Shimizu
posted2022/10/03 11:00
センバツ優勝の大阪桐蔭と“普通の公立校”…枚方なぎさ高顧問である磯岡氏に現場のリアルを聞いた
「甲子園の高校野球は僕からしたら別のスポーツです。高野連と朝日新聞が主催する今の甲子園大会はそのまま続けてもらってかまいません。多くのファンが楽しみにされ、その試合のドラマに感動されています。甲子園を目指す学校はそのまま、目指せばいい。
ただ、その代わりになる大会が必要だと思っています。新聞にも載らなくていい、ネットニュースにならなくてもいい。 でも努力次第で全国大会に出られる環境を作りたい。
枚方なぎさのような学校にとって、甲子園はあまりにも現実離れしたものになっています。 そんな二極化している状態のチームが同じ土俵で試合をしても、5イニングが終わる頃には10点以上を取られる。それでは彼らはかわいそう。コールドゲームで負けて、ただ自尊心を傷つけられて終わるだけになってしまっているような気がしてならないんです。
高校生活最後の大会はどちらの大会に出場しますか? そんな選択肢があってもいいような気がします。 今の甲子園大会は本当に高校生のためになっているのか。その疑問と戦っています」
高校野球の格差は中学の時から始まっているという
磯岡自身の経験談によると、高校野球の格差は中学の時から始まっているという。
小学校卒業を控えた愛息と地元・近畿地方の硬式野球チーム(シニア、ボーイズなど)の体験会に参加した時のこと。チーム関係者は、“うちのチームからどの強豪私学に何人の選手が入学したか、パイプがあるか”に重きを置いて説明したという。そこで私学の人材集めの熾烈さ、中学野球チームとの繋がりをあらためて実感した、という。
さらに中学硬式チームは少年野球の大会にスカウトにきて、時には5年生の子どもにも勧誘の声をかけるとも聞く。
中学生の部活は文科省の通達により平日は2時間程度と決められ、土日のどちらかも休むことになっている。一般的な中学生だと、強豪校での部活の練習に耐えられないことも少なくないのだという。
中学の硬式チームだと土日はもちろん、平日も練習するところがあり、私学に入学すれば立派な設備でさらに技術力を上げる。高校で選ばれるエリートとそうでない者の差は開く一方なのだ。
この秋に部員が20人超えてるんは…
磯岡以外にも、公立校で指導に携わる人々の声を聞いた。
まずは府立山田高校。20年秋、センバツ21世紀枠の大阪推薦校になった公立校だ。同校の金子恭平監督(43歳)は仙台育英投手陣についての印象をこう話す。
「5人のピッチャーって、ただの5人ではないですよね。公立からしたらエースが5人いてるような布陣です」
府立香里丘高校の岡田泰典監督(45歳)は、3人でもいれば最強投手陣だという。
「公立は“飛車角”が揃わない。“飛車”で1試合いったら次は“歩”でいくしかない。なんとか“と金”に育てる努力をするけど、せめて“桂馬”ぐらいがいたらなぁ」
山田も香里丘も大阪府内では比較的、公式戦を勝ち進める実力校である。しかし、エリート校との差にはため息をつく。野球の格差や底辺拡大という観点から、金子監督は衝撃的なことを話している。