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大迫勇也の“半端ないメンタル”が崖っぷちの神戸を蘇らせた…J1残留を争う激闘でカメラマンがとらえた決定的瞬間「PK蹴る気満々だ」
posted2022/09/21 11:01
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
90+3分、逆転ゴールを決めた大迫勇也は喜びを爆発させた。雄叫びを上げて走る背番号10はベンチから駆けてきた選手やスタッフに出迎えられ、歓喜の輪の中にその姿を消した。
試合前の時点で16位と15位。ヴィッセル神戸とガンバ大阪は、どちらもその戦力に似つかわしくない順位に沈んでいた。なかなか上昇のきっかけを掴むことができないまま時間が流れ、リーグ戦が佳境に入ろうとしているこのタイミングでの試合が、残留を争う直接対決になってしまった。
神戸がACLで見せた「今季ベストとワーストの試合」
毎年、残留争いに身を置くことになったチームの選手からは、「自分たちを信じるしかない」「ここまで来たら気持ちで戦うしかない」といった、メンタルの部分への言及が多く聞こえてくる。気合いや根性は、それさえあれば必ず成功できる、というものではないが、それが無ければ成功することはできない、という必要条件ではある。
気持ちで負けていたら勝つことはできない。戦いにおいてわざわざ言うまでもない、もっとも基本的なことのひとつだ。しかし、残留争いをしなければならなくなったそれまでの結果によって自分たちに疑問が生まれると、その基本的な部分が揺らぐ。そこが揺らぐと当然、「気持ちで負けたら勝てない」が現実のものになり、混迷を極めてしまう。そのため、苦しんでいる時こそ「自分たち次第」というメンタル面をあえて口にして崩壊を防ごうとする。自分たち自身のメンタルに矢印を向けるのは、防衛本能のようなものだ。
そういう面から見れば、ひとたび残留争いに巻き込まれてしまうと戦力や戦術ではなく気持ちの勝負になる、というのも見方としては間違っていないのかもしれない。
アジアナンバーワンクラブを目指している神戸にとって、今年最大の目標はACLのタイトルだった。今シーズン全体のベストマッチは、その目標のための最大の関門だと思われたラウンド16の横浜F・マリノス戦だろう。大迫がボールを収め、左サイドが回収し、右サイドへ大きく展開して飯野七聖を躍動させる、というその戦い方は、サイドバックが絞って積極的な戦い方をとるマリノスにとって嫌なものだった。もともと持っている個の強さに、相手に対して最も効果的な戦術を選択することがプラスされたその見事な戦いぶりは、低迷するJリーグでも近いうちに立ち直るであろうことを予感させるものだった。