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大迫勇也の“半端ないメンタル”が崖っぷちの神戸を蘇らせた…J1残留を争う激闘でカメラマンがとらえた決定的瞬間「PK蹴る気満々だ」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/09/21 11:01
9月18日に行われたJ1第30節。残留を争うヴィッセル神戸とガンバ大阪の直接対決は、大迫勇也の劇的な2ゴールで神戸に軍配が上がった
しかし、中3日で迎えた準々決勝で一転して今季ワーストクラスの試合を見せてしまった。過密日程のためにターンオーバーが実施されたが、それだけが理由ではなかった。今夏に獲得したステファン・ムゴシャを最前線に起用したものの、ボックス内でのフィニッシャーとして実績と評価を積み上げてきたモンテネグロ代表FWに求められたのは、大迫のようにボールを収める動き。タイプの異なる役割を課せられたムゴシャは前半からロングボールを全く収めることができずに苦しんでいたが、吉田孝行監督は彼を交代させることも別の戦い方に移ることもなく、思い通りの攻撃の形を作ることができないまま試合を進めた。コーナーキックの流れから先制点を得たものの、直後に追いつかれ、延長戦で敗れることになった。ムゴシャは最後までピッチに立ち懸命に競り合ったが、タイプの違いはどうしようもなかった。
年間最大の目標のための戦いでちぐはぐさを見せてしまった神戸は、いよいよ低迷を続けてきたリーグ戦での1部残留に照準を合わせることになった。
リスタートは9月3日だった。ACL敗退後の最初の試合かつ残留争いの直接対決でもあるという京都サンガ戦は、状況からタイミングまで全てがリーグ終盤戦への所信表明の場としてうってつけの試合のはずだった。しかし、ここで神戸は立ち上がりに2失点を喫し完敗。試合後、藤本憲明は「リバウンドメンタリティ」という言葉をコメントで使った。
欠場中のイニエスタの献身とは
J屈指のタレントを擁しながらも、ついに気持ちの勝負のゾーンまで足を踏み入れてしまった神戸。そんなチームを救ったのは、アンドレス・イニエスタや大迫だった。スター選手を抱えながら勝ち点にそれが結びつかない時期が長くなってしまったが、その強みが、困難が訪れたタイミングで表れた。
京都に敗れた後、神戸はイニエスタが中心となって全体ミーティングを行った。社長まで参加したその会では「低迷の責任は選手だけではなくクラブ全体によるものであり、残留に向けてポジティブな思考をし、自分たちで変えていく」ということが共有された。
8月6日を最後に試合に出ることができていないイニエスタだが、彼は誰よりもチームの敗戦を悔しがる。試合後のスタンドへの挨拶で、彼がどの選手よりも長く頭を下げているのを目にしたのは1度や2度ではない。
ミーティングを経たチームは、名古屋グランパスと引き分け、FC東京に勝利。底を脱したように見えるタイミングで、ガンバ戦がやってきた。