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近江・山田陽翔や大阪桐蔭以上に「仙台育英5人継投」「下関国際の先発→救援」が機能… “勝利の方程式”が高校野球でも必須に?

posted2022/09/01 06:00

 
 近江・山田陽翔や大阪桐蔭以上に「仙台育英5人継投」「下関国際の先発→救援」が機能… “勝利の方程式”が高校野球でも必須に?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

近江・山田陽翔や強力投手陣の大阪桐蔭ではなく、仙台育英が夏制覇を成し遂げた要因とは?

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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Hideki Sugiyama

 第104回全国高校野球選手権大会が閉幕した。「無事に」と言いたいところだ。折からオミクロン株の感染拡大が続き、選手の陽性者も多数出て、このままでは大会運営が危ういかと思えた。昨年は、コロナ陽性者が出たために2試合が不戦勝となったが、今年は何とか48試合を終了することができた。

「1週間で500球以内」という「球数制限」が導入されて今季で3年目だった。2020年はコロナ禍で大会がなかったから、今年は導入後、2回目の大会となる。

 では投手起用数、完投数はどのように変化したのか? 導入前の2018年からの推移を見ていこう。

<夏の甲子園の延べ起用投手数(1試合当たり)と、完投数(試合数に占める割合)>
2018年 55試合 212人(1.93人)51完投(46.4%)
2019年 48試合 212人(2.21人)28完投(29.2%)
2021年 46試合 195人(2.12人)29完投(31.5%)
2022年 48試合 231人(2.41人)21完投(21.9%)

 2018年は記念大会で参加校数も多かったが、金足農の吉田輝星が881球を投げて5完投したほか、下関国際の鶴田克樹が4完投、大阪桐蔭の柿木蓮、済美の山口直哉、高知商の北代真二郎が3完投するなど、各校に本格的なエースが出て完投数は51にも上った。「球数制限論争」はこうした状況を背景に起こった。

 翌2019年はまだ有識者会議の答申は出ていなかったものの、完投数は大幅に減る。各指導者が「球数制限」への問題意識を持ったことが大きいかもしれない。「投手の分業化」はすでに始まっていた。

 2021年が「1週間で500球」が適用される最初の夏の大会となった。しかしこの年は起用投手数はむしろ減り、完投数もやや増加した。2021年はコロナ禍の最中であり、とにかく野球部を維持するのが精いっぱいで、投手の頭数をそろえる余裕がなかったというところか。ただ、後述するが投手1人当たりの球数は減少している。

 今年もコロナ禍は続いているが、起用投手数は増え、完投数は減少した。「分業」を意識した投手起用が増えたというところではないか。

過去5年で投げた投手の「1イニング当たりの投球数」は?

<2018年以降の夏の大会、個人投球数5傑>※P/IPは1イニング当たりの投球数。15球を割り込めば優秀とされる。

●2018年
881球 吉田輝星(右)金足農(6試50回62三 率3.78)P/IP 17.62
607球 山口直哉(右)済美(5試43.2回21三 率3.30)P/IP 13.90
512球 柿木蓮(右)大阪桐蔭(6試36回39三 率1.00)P/IP 14.22
489球 鶴田克樹(右)下関国際(4試36回29三 率2.25)P/IP 13.58
449球 河村唯人(左)日大三(5試25.2回34三 率3.16)P/IP 17.49

●2019年
594球 清水大成(左)履正社(5試35.2回33三 率4.04)P/IP 16.65
512球 奥川恭伸(右)星稜(5試41.1回51三 率1.09)P/IP 12.39
355球 荒井大地(右)高岡商(3試23.1回12三 率5.01)P/IP 15.21
352球 林勇成(右)作新学院(3試24.2回11三 率2.19)P/IP 14.27
337球 不後祐将(左)中京学院大中京(6試19.1回20三 率4.19)P/IP 17.43

●2021年
483球 山田陽翔(右)近江(5試30回31三 率4.20)P/IP 16.10
429球 西村王雅(左)智辯学園(4試29回19三 率1.86)P/IP 14.79
427球 森下瑠大(左)京都国際(4試28回28三 率1.93)P/IP 15.25
360球 中西聖輝(右)智辯和歌山(3試23.2回22三 率0.38)P/IP 15.21
340球 渡辺翔真(右)盛岡大附(3試24.2回16三 率0.73)P/IP 13.78

●2022年
644球 山田陽翔(右)近江(5試38回51三 率3.55)P/IP 16.95
551球 佐山未来(右)聖光学院(5試34.2回15三 率3.89)P/IP 15.89
441球 古賀康誠(左)下関国際(5試23回17三 率2.35)P/IP 19.18
380球 有馬伽久(左)愛工大名電(4試25.1回16三 率3.91)P/IP 15.00
353球 仲井慎(右)下関国際(5試21回26三 率3.43)P/IP 16.81

【次ページ】 近江・山田と仙台育英投手陣の対照的な部分とは

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