月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
夏制覇の仙台育英、三冠王射程圏内の村上宗隆、快挙達成の大谷翔平…野球が熱かった8月のキーワードは「神」だった!
posted2022/09/01 11:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
BUNGEISHUNJU
『仙台育英 泣いた!!東北に大旗!!』(スポーツニッポン8月23日)
夏の甲子園(第104回全国高校野球選手権)で優勝旗がついに「白河の関」を越えた。
翌日のスポーツ紙はにぎやかでしたが、私が注目したのは芸能・社会面です。仙台育英OBや宮城県出身の著名人はたくさんいる。誰のコメントを大きく載せるのか? たとえばスポニチは宮城県出身の大友康平(HOUND DOG)、仙台在住で「青葉城恋唄」のヒット曲があるさとう宗幸。仙台出身のサンドウィッチマンに、仙台育英OBのパンサー尾形のコメントも。
そんななか目立ったのは、スポーツ報知が大きく扱っていたこの方だ。
『「全員ハグしたい」山本譲二』(8月23日)
ああ、なるほど! 「みちのくひとり旅」!
自身も夏の甲子園に出場経験のある山本譲二さんは興奮気味。
「あきらめない気持ちがヒットを生む。俺が歌手になるために上京した時も、野球から教わった根性が助けてくれた。師匠の北島三郎さんも、俺が甲子園に出ていなかったら弟子にしてくれなかったかもね。野球をしてなかったら、歌手・山本譲二はいなかった」
当時としては遅咲きで、31歳の時に「みちのくひとり旅」(1980年)の大ヒットで歌手人生が開けた。
「ファンから『譲二さんは仙台のどこ出身?』と聞かれすぎて、故郷は仙台とうそ言ったこともあったよ。まさに仙台は第2の故郷。」(山本譲二)
……ん? 故郷は仙台とうそ言ったことも?
あらためてプロフィールを読むと、
「1950年2月1日生まれ、72歳。山口・下関市出身」
山本譲二は下関市出身だった! 「全員ハグしたい」とは準優勝した下関国際のことだったのである! それにしても山口出身でみちのくに縁がある人物に気づいて取材した記者に一本取られた。こういう必要以上にアツい情報がスポーツ紙の醍醐味なのです。