マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「すぐに学校にクレームが来る時代です…」仙台育英・須江監督と雑談「高校生って、ワチャワチャしたい」 話して気づいた“意外な勝因”
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/08/29 17:04
東北勢初優勝を果たした仙台育英、108年目にして悲願の「白河越え」を達成。筆者はテレビ収録で須江航監督と再会した
「今は、帰宅の途中とかちょっとワチャワチャしただけで、学校にクレームが来たりする世の中です。
青春を生きる少年として、ごく当たりまえの欲求さえタブーにされてしまう中で、今年のうちの選手たちは、ほんとによく言うこと聞くし、辛抱したと思います。自分たちの高校時代なんて、言うこと聞かなかったですよ……敬意を表したいですね」
前任の佐々木順一朗監督(現・学法石川高監督)の頃から、仙台育英といえば、選手たちに説明能力があって、野球的精神年齢の高い選手たちが多かった。
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「それは、竹田先生(利秋、現・國學院大総監督)、順一朗先生の頃からの伝統ですから」
優勝メンバーの半数近くを2年生が占める
須江監督ご自身、とても話し上手な方である。
「野球の本質は“点取りゲーム”です。つまり、いかに先の塁を奪っていくかですから、足の速い選手に絶対的アドバンテージがあるのは事実です。ならば、足のそんなに速くない大柄な選手は必要ないか……というと、彼らにはパワーと長打力がある。単打ではベース1つのところを、一打でベース3つも4つも奪えるんですから、やっぱり必要なんです。自分の特性、得意ワザでどれだけチームに貢献できるかを、選手たちが考えてくれたら、充実した高校時代が送れると思うんです」
以前、そんな話を聞かせてくださったのを思い出す。
この夏の仙台育英は、「秋からのチーム」と周囲から言われていたという。
確かに、優勝メンバーの半数近くを2年生が占める。
「それだけに、このチームはキャプテンの佐藤(悠斗)はじめとして、3年生がすごくよくまとめてくれたんです。それには、ほんと心から感謝したい。でも、夏の優勝メンバーがレギュラーに5人、6人いるから勝てるほど、高校野球は甘くない。特に、この秋の“東北”は、光星、青森山田、花巻東……強いです」
まだまだ祝賀モードが続く中、9月16日には秋の公式戦が初戦を迎える。新チーム・仙台育英もこの日が「お正月」である。
てっぺんを獲るのはとても難しく、そこに居続けるのは、もっと、もっと難しい。
雑談の中にも、ふんどしを絞め直す須江監督であった。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。