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イチローが「化け物ですね」 “ドラ1候補”高松商・浅野翔吾の本当の凄さとは?「プロでもスイッチヒッターを続けたい」
posted2022/08/31 06:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Nanae Suzuki
彼は四国のドカベンだから、と長尾健司監督が「♪気は優しくてチィ~カラ持ち」と唄いながら紹介するのが、身長172cm、体重83kgのスラッガー、高松商の浅野翔吾だ。175cm、85kgの山田太郎よりひと回り小柄ながら50mを5秒台で走り、高校通算ホームラン数はPL学園の清原和博を超えた。
プロ志望の浅野を巡っては早くもドラフト1位の声が飛び交う。この夏の香川大会では初戦、準決勝、決勝と大事なところでホームランを放ち、甲子園でも初戦で2本のホームランを打った。そのうちの1本が右打席から浜風を切り裂く右中間へ弾き返した一発だったから、スカウト陣が色めき立ったのも無理はない。
右打席から――あえてそう書いたのは浅野がスイッチヒッターだからだ。右打ちの浅野が左で打つようになったのは長尾監督の発案だった。
「野球マンガですよ。ほら、『MAJOR』(満田拓也)のジョー・ギブソンJr.が左打ちだったのに、左ピッチャーの変化球に対応するために右で打つようになったでしょ。しかも右には左、左には右のスイッチじゃなくて、変化球投手に対しては右、速球派のピッチャーには左で打ちよる……あのイメージです」
イチロー「化け物ですね」
右の浅野は左ピッチャーの変化球の対応に苦慮していた。ところがその緩い球を左打席に立って打つとうまく捌けたのだという。実際、試合でも左でホームランを打っている。
「左で打つようになってから身体のバランスもよくなったし、気持ちにも余裕が出てきました。もしプロに行けたら、プロでもスイッチヒッターを続けたいと思っています」
そう言った浅野の左打席は、あのイチローのお墨付きでもある。
「左打席で左方向にもこんなホームランを打てるの? 化け物ですね」
昨年12月、高松商の指導に訪れたイチローは、左打席からレクザムスタジアムの左中間の芝生席へホームランを放った浅野のバッティングに仰天した。そして、こう続けた。
「ああいうホームランを打てる選手はキャプテンに向かないタイプが多いのに、浅野君はキャプテンも任されてますからね。その時点で彼は僕の想像の上をいっていますよね」
今秋、浅野を指名するのはどのチームか。そして来春、浅野は左打席でもホームランを打っているだろうか。