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タイガー・クイーン妹分の“デビュー戦で重傷”はなぜ起きたのか? Sareeeの“危険な技”論争も拡散…プロレスラーのケガと、ファンはどう向き合うべきか
posted2024/12/17 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
このところ、またプロレス界で選手のケガが話題になっている。
プロレスラーはケガをしてはいけないし、させてはいけないと言われる。不注意や技量不足で“出番”に穴をあけては(あけさせては)いけないのだ。
ただ、どれだけ注意してもプロレスにケガはつきものでもある。ケガをしたくてする選手、させたくてさせる選手はいない。
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11月2日、マリーゴールド札幌大会では団体頂点の“真紅のベルト”ワールド王座を保持するSareeeの必殺技・裏投げが“危険な技”ではないかと指摘されることになった。
タイトルマッチ前哨戦として高橋奈七永とタッグ戦で闘ったSareeeは裏投げを決めたのだが、高橋の後頭部から首にかけてマットに突き刺さるような形に。高橋は救急車で病院に運ばれ、脊柱起立筋損傷によりタイトルマッチは1カ月延期となった(12月13日にSareeeが王座防衛)。
この負傷のことは記事にもなり、また試合の映像が配信されると、裏投げの場面が切り取られてXで拡散。Sareeeには誹謗中傷も含む批判が数多く届いたという。また現役選手と元選手による“論争”も。
Sareeeの裏投げで相手がケガをしたのは間違いない。ただ、だからといって即座に“Sareeeの裏投げは危険”と言えるのだろうか。
“裏投げ問題”ではなく“受身問題”の可能性も
多くの人間が数秒の切り抜き動画だけを見て批評、批判をしているのだが、大事なのは普段との比較ではないか。高橋が負傷した裏投げは、いつものそれより落ちる角度がきついものだった。
別の試合の写真では、投げ方を相手によって変え、受身の取りやすさを調整しているようにも見える。毎回、高橋に放ったような角度で投げているわけではない。
Sareeeの裏投げそのものが悪いのか、失敗して角度がいつもより急だったのが悪いのか。その区別をつけた議論が必要だ。その上で、どんな技にでも失敗はあると言わなければならない。その意味では、プロレスはすべての技が“危険”ではある。
技の受け手が、あえて綺麗に投げられることでダメージを軽減するということもあるという。そう考えれば高橋の“受け”に着眼する者もいて当然だ。“裏投げ問題”という言葉を使う記事もあったが、むしろ“受身問題”の可能性もある。