マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「すぐに学校にクレームが来る時代です…」仙台育英・須江監督と雑談「高校生って、ワチャワチャしたい」 話して気づいた“意外な勝因”
posted2022/08/29 17:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
仙台育英高・須江航監督とは、付属の秀光中学校で監督をされていた頃が初めてだから、15年近くになるだろうか。
今も印象は変わらないが、当時はまだ学生さんのように初々しかった。それでも、硬式野球部の広大なグラウンドの“こっち側”にあるサッカー場仕様のグラウンドで、まだ子供みたいな中学球児に、元気にノックを打ち込んでいたものだ。
その須江さんがなぁ……。当時の姿を思い出しながら、「夏の甲子園」 の画面を見つめる。
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場面は、決勝戦の9回一死。まもなく決まろうとしている東北勢初めての優勝シーンを追いかけていた。仙台育英高の優勝から数日経った頃、地元のテレビ局の、快挙を祝福する番組に私も呼んでいただいたのだ。
この日、主役はもちろん、須江監督である。
生放送の本番が始まる前、そして終わったあと、しばらくぶりにお会いした須江監督と、とりとめのない話が楽しかった。
「いちばんの奇跡は…」
準決勝の日。画面に映った須江監督の目が、すごく疲れているように見えた。帽子とマスクの間で、「目」はすごく雄弁に、いろいろと語ってくれる。
「そんなふうに見えてましたか……」
笑いながら、両手で顔をゴシゴシとやって、フーッと息を吐いた。
「いろいろ、しんどいところはありましたね。選手たちも、私も」
そこから、大会中の生活の話になった。
「いくつもの奇跡が重なった優勝みたいに報じられましたけど、いちばんの奇跡は、初戦からすべて第1試合だったことかもしれないですね。それも、宮城県予選からずっとそうでしたから」
宮城県予選では第1シード校だったので、始まる前からわかっていた。だが、甲子園大会の準々決勝・準決勝はその都度抽選で、対戦相手と試合開始時間が決まる。
それでも、決勝戦(14時開始)以外は、朝8時開始の「第1試合」が続いた(準決勝は朝9時だった)。