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オリンピックへの道BACK NUMBER
解説者で振付師で研究者、町田樹が出演冠番組の企画と構成まで行っていた!「一見するとマルチタレントのようかもしれないが、そうではない」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/08/08 11:03
冠番組では出演だけでなく番組内容の企画や収録までの打ち合わせも行う町田。さまざまなフィールドで活躍する”氷上の哲学者”に話を聞くと…
町田が問いかける。もともとは旧国立競技場にあったが、建て替えを契機として、貴重な資料が公開されることなくただ保管される現状にあった。たしかに「窮状」と言ってよかった。それを知ったとき、町田の問題意識と結びついた。
「研究者としてアーカイブ学も専門の一つとしていて、2020年にアーカイブ学の論文を発表しています。そうした研究の成果によって日本のスポーツアーカイブが危機的状況にあることを知りました。秩父宮のこのような状態さえ知られていないわけですから。アーカイブというのは未来を形作る上での礎になりますし、文化の成熟度を示すバロメーターでもあります。そのためスポーツ界のアーカイブが乏しいと、スポーツ文化そのものが深まっていかないのです。そうした問題意識のもとにスポーツアーカイブ、秩父宮記念スポーツ博物館の存在を広く社会に発信しなければいけないと企画をまとめました」
緻密な事前準備によって自ら企画・構成
企画にのっとって構成を組み立てることになるが、そこには緻密な事前準備があった。
「撮影の前に何回も会議があります。博物館の学芸員の先生方と対話を重ねて、『このような構成はいかがでしょうか』『こういう資料を見せていただいて、こういう流れでの対話はいかがでしょうか』と一つひとつ事前準備をしています」
事前準備はそれだけにとどまっていない。博物館に訪れる機会を得て、前もって所蔵資料や保存状態なども知った上で企画をつくりあげたのだという。
それらの緻密な準備は、収録の合い間にもうかがえた。対談する学芸員の方々に歩み寄って、ディレクターが介在することなく、どういう流れにしたいかを相談し、何を伝えたいかを尋ねるなど打ち合わせをする。そんなテレビには映っていないやりとりからも、「構成」を担う意識が見て取れた。
本田真凜さんが言っていたことはまさにそうですよね
もう一つ印象的なのは「聞く力」だった。