オリンピックへの道BACK NUMBER

解説者で振付師で研究者、町田樹が出演冠番組の企画と構成まで行っていた!「一見するとマルチタレントのようかもしれないが、そうではない」 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2022/08/08 11:03

解説者で振付師で研究者、町田樹が出演冠番組の企画と構成まで行っていた!「一見するとマルチタレントのようかもしれないが、そうではない」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

冠番組では出演だけでなく番組内容の企画や収録までの打ち合わせも行う町田。さまざまなフィールドで活躍する”氷上の哲学者”に話を聞くと…

「この番組は私の名前が冠としてついているのですが、今回でいえば学芸員の方が主役です。私が主役という考えは一切ありません。現場の方々のお話あるいは問題が社会に伝わるようにと意識しながら制作しています。そういう意味ではキャスター的な役割かもしれません」

 聞くためには、相手に問いかけて、そこからやりとりして話を引き出す必要がある。そこにも熟練を感じさせた。

「選手の頃は自分が聞かれて話すということしかしていませんでした。例えば先日、本田真凜さんが1カ月キャスターをやって、その感想で『いつも聞かれるばっかりだったから聞く側が難しかった』というようなお話をされていますけれど、まさにそうですよね。私も最初は苦労しましたし、至らぬところがあって注意もされたりしながら、イチから学びました」

 聞く立場となり、町田が意識していることがある。

「研究者というのがキーワードで、研究というのも過去に積み重ねられてきた先行研究との対話によって自分の新しい考えを提示する営為です。それと同じで対話するときも、相手の見解やこれまでの取り組みをしっかりと熟知したうえで、自分の考えや疑問を真摯に投げかけながら、共に新しい知見を創造していく、という心構えで臨んでいます」

 新しい考えを提示するために事前のリサーチは欠かせないという。

「取材対象者、対談の相手の方を綿密にリサーチさせていただいて打ち合わせの対話を通して話したいこと、本音みたいなことをしっかり理解する。オフィシャルの場で話せないことはあると思いますから、それをうまい形で表現していただくにはどうしたらよいのか一緒に考え、お話いただけるボーダーラインはどこなのかを丁寧に探りながらお互いに方向性を探っていきます」

振り付けも番組制作も解説も、全部研究活動の一環

 これまで話している中でも、何度も「研究者」という言葉があった。

【次ページ】 収録の場で響いた、町田のあるひとこと

BACK 1 2 3 4 5 NEXT
町田樹
秩父宮記念スポーツ博物館

フィギュアスケートの前後の記事

ページトップ