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「スーツの時はだいたいペーズリー柄のネクタイで遊んでいます」町田樹が明かす衣装へのこだわり「フィギュアスケートのベスト3を挙げるとしたら…」

posted2022/08/08 11:04

 
「スーツの時はだいたいペーズリー柄のネクタイで遊んでいます」町田樹が明かす衣装へのこだわり「フィギュアスケートのベスト3を挙げるとしたら…」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

テレビ収録も兼ねていたこの日はフォーマルスタイルの町田。フィギュアスケーターとしての衣装を中心に話を聞いた

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph by

Asami Enomoto

 現役時代は2014年ソチ五輪で5位、世界選手権銀メダルを獲得し、独自の世界観と言語表現で“氷上の哲学者”と称された町田樹。現在は解説者、研究者として活躍する町田が衣装に込めていた思いを語った。<全2回の2回目/第1回は#1へ>

 フィギュアスケートと衣装は切っても切れない関係にある。

 町田樹は語る。

「衣装にとって大事なことは2つあります。1つは機能性です。激しく繊細な動きをするので機能性に優れていなければそもそもいいパフォーマンスはできません。もう1つは、言わずもがな芸術性ですね。この2つはときに相反するわけです。芸術性を追求しすぎると装飾が多くなったり、アシンメトリーなデザインになったら遠心力のかかり方が左右対称にならず、バランスが崩れるみたいなことがある。フィギュアスケートが競技性と芸術性を調和させるのが難しいように、衣装もまた芸術性と機能性を調和させるのが難しいですね」

過度な装飾がなくても、美しい衣装は作れる

 その衣装において、町田もまたこだわりを持ってきた。

「プロフェッショナル時代は『Atelier t.e.r.m』という企画や製作をする匿名の制作者集団と連携しながら衣装も作っていました。その過程で装飾をなくす、キラキラのストーンなどの装飾を極力排するようなデザイン、例えば生地のよさで見せていく、機能性を阻害しないような芸術性の高め方を追求していました。それを実践してきたのがプロ時代の衣装です。たとえ過度な装飾がなくても、十分に美しい衣装を制作することは可能です」

 その考えのもとにつくられた衣装として、町田が振り付けて今春に披露された田中刑事の『ショパンの夜に』をあげる。

「あの衣装もAtelier t.e.r.mがデザインしたものです。装飾は一切なくて、首元に黒いリボンタイをつけてあとはシルク素材の少し光沢のある軽い生地、風になびくと陰影が味わい深くなる衣装です」

 町田がフィギュアスケートの衣装でもう1点、着目するポイントがある。

【次ページ】 数々の衣装の中から、3つ選ぶとしたら?

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町田樹

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