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オリンピックへの道BACK NUMBER
解説者で振付師で研究者、町田樹が出演冠番組の企画と構成まで行っていた!「一見するとマルチタレントのようかもしれないが、そうではない」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2022/08/08 11:03
冠番組では出演だけでなく番組内容の企画や収録までの打ち合わせも行う町田。さまざまなフィールドで活躍する”氷上の哲学者”に話を聞くと…
「私の専門とするところを強みにした3本柱、『ルポルタージュ』『アーカイブ』『ダイアログ』です」
『ルポルタージュ』はスポーツ施設の今を訪ねるロケ企画だ。
「閑古鳥が鳴き、このままなら経営難などで閉鎖に追い込まれてしまう施設が日本にはたくさんあります。いかにして施設を維持して日本のスポーツ環境を守れるのか、という問題意識を持って作っています」
2つ目の『アーカイブ』はフィギュアスケート史に残る優れたプログラムを深く分析する、映像を組み合わせた解説企画になる。
「このアーカイブ企画は私の最大の強みです。フィギュアスケートの傑作プログラムは何度でも鑑賞に値します。このような良質なプログラムの芸術的価値をとことん追究して語ることが、アーカイブ企画の醍醐味です。フィギュアスケートはスポーツとしての側面が強調されがちですが、舞踊芸術の一ジャンルになり得るのだということを実証する画期的な企画と言えるのではないでしょうか」
3つ目の『ダイアログ』はスポーツ分野の研究者と対話をする対談企画だ。
「スポーツ科学とひと口に言っても、私が専門としているスポーツ法学やスポーツ社会学のみならず、スポーツ経済学やスポーツ栄養学、スポーツ哲学、運動生理学……これ以外にもきりがないほどあらゆる領域があります。一つひとつの学問領域をリードされている研究者の方をお招きして最新の研究成果を明らかにし、それを実践の現場に役立ててもらうように発信する。それがダイアログ企画の趣旨です」
スポーツ関連の貴重な資料の「窮状」
企画・構成をする町田は実際どのように番組に関わっているのか。7月25日に放送された「秩父宮記念スポーツ博物館・図書館」の収録に同行した。
秩父宮記念スポーツ博物館・図書館は日本で唯一のスポーツ総合博物館とスポーツ関連の書籍や雑誌などを収集する図書館から成る。まさにここにしかない貴重な資料が膨大に管理されているが、町田が収録のために向かったのは、千葉県内の倉庫群にある建物だった。
「この窮状はご存じなかったのではないですか?」