甲子園の風BACK NUMBER
甲子園出場の経費は2000万円!? ケタ違いでも学校・地域が“高校野球の経済効果”に力を入れるワケ〈昔は池田・箕島、今は21世紀枠〉
text by
手束仁Jin Teduka
photograph byJIJI PRESS
posted2022/08/07 11:02
春夏連覇などで甲子園を沸かせた箕島高校。このような公立校にとっては「町おこし」の一面もある
他にも、甲子園出場によってユニフォームの新調や、それに伴ってベースボールバッグや、その他の周辺グッズなども新調したり、新規に作成購入したりするということもある。それらも、ベンチ入り選手だけではなく全部員分を購入していくと、それだけ予算は膨らんでいく(場合によっては、ベンチ外の選手は3年生の分のみ新調、新規購入というケースもある)。
出場決定から、応援のための資金集めまでの流れとは
甲子園出場が決まると、まず甲子園へ送り出すための準備委員会が設立される。これは、学校によってそれぞれケースが異なるであろうが、常連校と言われるところはともかく、ことに初出場や久々の出場の場合はてんやわんやとなる。
代表決定から本番まで約1カ月半以上ある春と違って、夏の選手権は代表決定から大会開幕までの期間が極めて短い。地区によっては、地区大会決勝から甲子園の開幕まで、1週間から10日くらいしかないという日程になっている。雨などで日程がずれ込んでいれば、それよりも短いというケースも起きてくるであろう。そんな中で、応援体制を作り上げていかなくてはならない。
それに万が一、開幕日に試合ということになったら、それこそ準備期間はさらに短縮されてしまう。その対応は、まさにすべてが突貫工事となる。
かつて、記念大会となった東愛知大会を制して、3度目の甲子園出場を果たした大府の場合を例に取ってみよう。
地元の公立校という形でもあり、甲子園出場でどんな段取りが必要なのかということがある程度顕著な例だ。大府の場合、出場が28年ぶりとあって、初出場とあまり大差ない感覚である。
ところが、代表決定からあっという間に「甲子園出場後援会」が設立された。
高校野球がいかに地域と密着していなければならないのか
その構成としては、会長として野球部後援会長が出場実行委員会会長も兼ねて着任。副会長としては同窓会会長、野球部OB会長、PTA会長、学校の後援組織である伊勢木会会長、商工会議所会頭、あいち知多農業協同組合長、大府市体育協会会長などが名を連ねた。まずは、地元の組織をしっかりと確立していくということになる。
こうした構図を見ても、改めて高校野球がいかに地域と密着していなければならないのか、ということがわかるだろう。地域に根差していればいるほど、こうした根幹部分での準備が進んでいくというものなのである。さらには、地域行政も巻き込んでいくことになる。
大府の場合、委員としては大府市の副市長と教育長、市内4中学の校長と区長会から数名が選出されている。加えて、老人クラブ連合会長、大府市文化協会、地域婦人連絡協議会、青年会議所理事長に体育協会副会長なども参加。こうして、まさに地域を巻き込んでの「甲子園へ送り出す会」が組織されていく。
出場実行委員会としては、「募金部会」が設置されて伊勢木会、PTA、野球部OB会、同窓会と区長会に向けてのそれぞれの役割が振り分けられている。こうした運営委員会が、それぞれの伝手を用いて集金活動などを行っていくというのが、かつて甲子園出場を果たした場合の応援体制を作っていく形だった。