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波乱の初戦敗退も…なぜ京都国際ナインは“笑顔”だった? センバツ辞退の絶望、勝てない春…“無表情だった”エース森下瑠大が変わった日
posted2022/08/07 11:03
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
KYODO
コロナ禍の夏の甲子園。
代表校の選手に陽性者が出たことで大会日程の調整を余儀なくされ、開会式もキャプテンのみの入場行進となるなど、いまだウイルスの猛威にさらされている。
危機感がまだ色濃く漂う大会初日。第3試合に京都国際は登場した。
「万全の状態にするため細心の注意を払いながら準備はしていますが、そればかり気にし過ぎても練習はできないので。難しい部分ではありましたけど」
京都国際の小牧憲継監督は、もどかしさを窺わせつつも、言葉を選びながら話した。
絶対エース森下を起用するが…
指揮官は駆け引きなしの勝負に出た。
「本調子でないことはわかっていた」としながらも、昨夏もエースとしてベスト4進出に貢献し、状態が悪くともゲームを作れる安定感を信頼して「初日ということで経験値に賭けた」と、エースの森下瑠大を先発に起用した。
プロ注目の左腕がしなる。だが、コントロールがままならない。真ん中へ甘く入ったストレートや変化球を相手の一関学院打線にことごとく捉えられ、1回に3点を献上。3回にも1点を失い、マウンドを降りた。
「ピッチングでは自分が打たれて点を取られたので、全然ダメでした」
森下は猛省したが、4回からライトに回っても下を向くことはなかった。それどころか、笑顔を絶やすことがなかった。
「甲子園で一番楽しむつもりでやったので、自然と出ました」
エースだけではない。全員が笑っていた。キャプテンの辻井心がチームの心根を表す。