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甲子園の風BACK NUMBER
「あれが大阪桐蔭の強さなんですよね」“最大の宿敵”履正社の新監督が唸った松尾汐恩(3年)の1本とは?〈夏は11連敗中〉
posted2022/07/15 17:02
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
Sankei Shimbun
例年以上に大阪の夏に熱い視線が注がれている。
この春、4度目のセンバツ制覇を達成した大阪桐蔭。過去にも3度の優勝を誇るが、今大会は4試合で51点を叩き出した強力打線、13回を投げて“防御率0.00”をマークした2年生左腕・前田悠伍らを擁する安定した投手陣で、圧倒的な勝ちっぷりをみせて話題を独占した。センバツ閉幕直後は、“強すぎる大阪桐蔭”に対して「強すぎて面白くない」「あれだけの戦力が集まれば……」という、皮肉のような声も多く聞かれるほどだった。
だが、センバツ直後に行われた春季大会は苦戦が続いた。
4回戦の関西大倉戦では2点を先制するも、終盤にもじりじりと追い上げられ、9回は2死満塁まで攻め立てられるなど息の抜けない展開が続いた。5回戦の大阪電通大高戦も4−1で勝利したものの、8回まで登板した好右腕・的場吏玖(りく)に4安打に抑えられた。
そして大阪桐蔭を最も苦しめたとされたのが、決勝で相対した履正社だった。
35年間チームを率いた岡田監督が退任
履正社はこの4月から35年間チームを率いてきた岡田龍生前監督が母校・東洋大姫路の監督に就任するために退任。バトンを引き継いだのは、長らく岡田前監督の横でコーチとして選手を見守ってきた多田晃監督だった。自身も岡田野球の教え子である新指揮官は、恩師の野球をベースにしながら、“新生・履正社”を磨いている最中だ。
「今まで岡田先生(前監督)がされてきたこと……バッティングだけでなく、守備やバント、走塁もきっちり指導しておられたので、そこにさらに盗塁ができるというか、積極的に狙っていくことを考えてきました。大きく変えたわけではないのですが、プラスアルファで何かを付け加えていけたらと思ったんです」
単に足で揺さぶる、ではなく、本格的に足を使った“速攻”をチームに取り入れることで、ベンチの雰囲気も変わった。
「前からもそうではあったのですが、試合中にベンチでよく配球だとか投手の癖とか、リードをどう取ればいいのかとか、今年になってからは以前よりもその都度みんなで考えるようになりました」