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「勢いが通用するのはベスト8まで」イチローが見抜いた千葉明徳が超えるべき“壁”…監督主導→選手主導で何が変わった?
posted2022/07/15 17:01
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Kiichi Matsumoto
千葉明徳は、夏の県大会で2019年から3年連続ベスト8入りを果たしている。強豪校の一歩手前に位置する“実力校”だ。
同校のグラウンドにイチローが姿を見せたのは昨年11月28日。ネット裏に陣取り、國學院久我山との練習試合に視線を注いだ。
秋季東京都大会の優勝校を相手に、千葉明徳は終盤に点差を広げられ、敗戦。監督の岡野賢太郎は、イチローのやや辛辣なコメントを記憶している。
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「これじゃベスト8を越えられないよね」
指摘されたのは、落ち着きのなさだ。選手たちが常に大きな声を出し、盛り立てるのが千葉明徳のチームカラーだが、それによる“わちゃわちゃ感”が問題とされた。
「勢いが通用するのは、ベスト8まで」
そもそも、声出しを推し進めてきたのには理由がある。岡野監督は言う。
「うちの子たちは中学時代の実績もそれほどないですし、私が就任したころ(15年秋)は、公立校の受験に失敗して入ってくるような子も多くいて、強豪校に対して戦う前から負けているところがあった。声を出させることで『こっちがてっぺんを獲るんだ』という闘争心を植えつけたかったんです」
声の力で勢いをつけ、敵を圧倒する。それはたしかに、千葉明徳を県ベスト8まで押し上げた要因の一つかもしれない。だが、むやみな声出しの限界を、イチローはすぐに見抜く。選手たちにこう話した。
「勢いが通用するのは、試合の前半戦まで。トーナメントならベスト8まで。その先になってくると、『最後はおれらが勝てるよな』って、落ち着いて構えているチームには負けてしまう」
岡野監督は「子どもたちは面食らったと思います」と振り返るが、イチローの言葉は自身の心をも揺さぶっていた。