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甲子園の風BACK NUMBER
「あれが大阪桐蔭の強さなんですよね」“最大の宿敵”履正社の新監督が唸った松尾汐恩(3年)の1本とは?〈夏は11連敗中〉
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/15 17:02
履正社・多田監督が唸った大阪桐蔭・松尾汐恩(3年)の存在感。春季大会決勝では惜しくも敗れたが、夏のリベンジを誓った
「3回表に前田君をうまく攻め立てて点を取れました。どうしても先制点が欲しい中、1番の光弘(帆高)がいいところで打ってくれました。(2番の)西(稜太)もよく続いてくれました」
それでも……と多田監督はため息をつく。
「2017年のセンバツの決勝でも、8回にウチが3点差を追いついた直後に大阪桐蔭の坂之下(晴人=現・三菱重工west)君にヒットを打たれたことをきっかけに突き放されたのですが、今回も先制した直後(3回裏)に松尾君がすぐにソロホームランを打って1点差にされたでしょう。あれが大阪桐蔭の強さなんですよね」
たとえ1点でもきっちり返して足跡を残し、中盤、終盤にかけて追いつき、そして追い越す。
事実、大阪桐蔭は5回表に4番の丸山一喜の左前適時打で同点とし、8回表には代打・工藤翔斗の犠飛で勝ち越しに成功。結果、3−2で履正社を退けて春の大阪を制した。
「ウチが先手を取ったり、追いついても、その先になかなか進めない。でも、すぐに追い越せるのが桐蔭さんの強さなんです。ゲームの進め方が上手というか、アウトになるにしてもあっさりと終わらない。点を取った後の集中力なのでしょうかね……西谷(浩一)先生もどういった言葉を掛けながら指導されているのか分かりませんが、それは常に感じています。1点を返された時、さすがやなという感じでした。勝負強さの差だったと思いますね。過去にウチは桐蔭さんに点差を広げて勝った試合はありましたが、1点差で勝った試合は少ないんです」
夏は大阪桐蔭に11連敗中
2020年の交流試合を除き、夏に限っては大阪桐蔭に11連敗を喫している。決勝戦で先制の三塁打を放った注目の強打者・光弘もその1点の重みを冷静に受け止めていた。
「あの1点の差は気持ちの差だったと思います。大阪桐蔭は試合になるとチームで束になってかかってくるんです。大阪桐蔭は1点への執着が違う。相手のスキは逃さない。そういうところはさすがです。でも……夏こそは勝ちたいです」