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「お父さん、ぼく横浜高校に行きたい」野球U-12日本代表が“熊本から越境入学” その時、両親は…「親元に置いておきたい気持ちはありましたが」 

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樫本ゆき

樫本ゆきYuki Kahimoto

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photograph byNanae Suzuki

posted2022/07/13 11:02

「お父さん、ぼく横浜高校に行きたい」野球U-12日本代表が“熊本から越境入学” その時、両親は…「親元に置いておきたい気持ちはありましたが」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

主将としてU-12でアジア制覇、U-15で世界一に輝いた星子天真主将(大阪桐蔭)は熊本で野球の礎を築いた

「以前と比べて県外から高校野球の関係者がスカウトに来ることが増えているのは確かですね。かつては全国大会だけだったのが、最近は直接グラウンドに足を運ぶ方も増えました。選手の情報がいろいろなところで出回っているのかもしれません。

 何か革命を起こさないと、このままでは熊本から良い選手が県外に出て行ってしまう。熊本の高校に魅力を感じないから県外に出てしまうというのもあると思います。そういう話を熊本の高校野球指導者に直接言う時もあります。『この学校で甲子園に行きたい!』という学校があれば、子どもたちは残るはず。なんとか……頑張って欲しいですよね!」

熊本で決められた「あるルール」

 ネットで手軽に情報が入手できる時代。大人が思っている以上に、中学生は高校野球の情報を自分で調べている。行きたい学校を自分で探す時代となり、交通機関の利便性が良くなった今、学校がある場所を気にせずに行きたい学校を口にする選手もいる。そんな中で「地元の指導者、もっと頑張れ」と願うのは自然な流れのように思う。

 さらに、今回の取材で協力してくれた九州学院OBで甲子園出場経験のある池田工さんが、熊本で決められている“あるルール”について教えてくれた。

「熊本の高校野球指導者が中学生に接触をしていい解禁日が『中学3年生の11月から』なんです。野球部に限らず県全体の決まりなのですが、実際にその時期に進路の話を持ち掛けても、有望選手のほとんどはすでに進路が決まっているという現状があります。県内の監督たちは歯がゆい思いをしているはずです」

 池田さんは現在、公立高校に勤務しており、高校野球の指導から離れてハンドボール部の顧問をしている。熊本の元高校球児で、関係者の気持ちがわかるからこそ、フラットな立場で熊本高校野球の未来を案じている。「僕が言える立場ではありませんが、熊本の学校を本当に強くしたいのなら、このあたりも見直す時期に来ているのかもしれませんね」と続けた。

【次ページ】 U-12の日本代表捕手「お父さん、ぼく横浜高校に行きたい」

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