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「お父さん、ぼく横浜高校に行きたい」野球U-12日本代表が“熊本から越境入学” その時、両親は…「親元に置いておきたい気持ちはありましたが」

posted2022/07/13 11:02

 
「お父さん、ぼく横浜高校に行きたい」野球U-12日本代表が“熊本から越境入学” その時、両親は…「親元に置いておきたい気持ちはありましたが」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

主将としてU-12でアジア制覇、U-15で世界一に輝いた星子天真主将(大阪桐蔭)は熊本で野球の礎を築いた

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樫本ゆき

樫本ゆきYuki Kahimoto

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Nanae Suzuki

熊本が生んだ村上宗隆(ヤクルト)は地元の高校・九州学院を選び、そこで可能性を伸ばした。しかし村上の選択は一例にすぎない。いま熊本では、中学時代に活躍した選手たちの県外志向が高まっているのだ。何が起きているのか? 理由を探った。(全3回の3回目/前編#1中編#2へ)

 大阪桐蔭の主将を務める星子天真を筆頭に、春の府決勝で大阪桐蔭と対戦した履正社の主将・小西柚生。ほかに浦和学院、報徳学園……強豪校の主力メンバーに名を連ねる「熊本出身」選手たち。

 その熊本。じつは近年、全国で結果を出せていない。2016、17年の秀岳館の活躍以降、春夏甲子園の戦績は5戦1勝。17年秋以降の九州大会は9大会で3勝しか挙げておらず、一般枠でのセンバツ出場も果たせていない(21世紀枠では19年に熊本西が出場)。夏の甲子園は10年から21年までの11大会で7校が出場。絶対王者不在の現状がわかる。そこで思う。もしかしたら――熊本の中学生が県内の高校選びに苦労しているのではないか。

中学チームの監督「革命を起こさないと、熊本から良い選手が…」

 訪れたのは菊池市にグラウンドがある熊本中央ボーイズ。この夏、3年連続全国大会出場を決めた中学硬式チームだ。野球を通じた人間教育を行い、県内外の高校にバトンを渡している。西武、南海でプレーした元プロ野球選手の大津一洋監督は熊本工時代、伊東勤とバッテリーを組み甲子園8強。教え子には神村学園出身の桑原秀侍(ソフトバンク)、横浜出身の津田啓史(三菱重工East)らがいる。そんな大津監督に、熊本に県外志向の選手が増えている現状について率直な考えを聞いた。

「わたし個人の本音としては、県内に残って欲しいんですよね。私の母校も熊工ですので、地元に残って熊本のレベルをもっと上げて欲しいという思いはあります。しかし近年は県外に行く選手が多くなりました」

 なぜこのような事態が起こっているのか? 20年以上中学生を指導している大津監督の考えはこうだ。

【次ページ】 熊本で決められた「あるルール」

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