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羽生結弦の“超高難度ジャンプ”がルールを変えた…アクセルの時代へ、国際スケート連盟の決断はなぜ起きた?「減点する理由がない」

posted2022/07/11 11:01

 
羽生結弦の“超高難度ジャンプ”がルールを変えた…アクセルの時代へ、国際スケート連盟の決断はなぜ起きた?「減点する理由がない」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

平昌五輪直後の'18-'19シーズン、'18年11月のGPフィンランド大会で4T-3Aに挑み、世界初成功させた羽生

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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Asami Enomoto

 アクセルジャンプの時代が到来する。そう言い切れる画期的なルール改正が行われた。6月に行われた国際スケート連盟総会で「ジャンプの着氷後、ただちにアクセルジャンプを跳ぶ」というシークエンスの扱いが変わり、基礎点が80%から100%になった。この変更で最も注目を集めるのは、羽生結弦が2018年に世界初で成功させた「4回転トウループ+トリプルアクセル」である。

 これまでのルールでは、連続ジャンプは「(左回転の場合)着氷した右足のまま、踏み変えずに跳ぶ」と定義され、右足から左足に踏み変えて跳ぶアクセルは「シークエンス」と呼ばれ「踏み変えるぶん難度が低く、80%の得点」とされていた。

 しかし実際には「4回転トウループ+トリプルアクセル」は超難度。4回転トウループの着氷の流れが良いことと、アクセルをどんな助走からでも踏み切れる技術が必要になる。羽生は'18年GPフィンランド大会と'19年世界選手権で成功し、挑んだ理由をこう話した。

「点数的にということではなく、自分ができる最高の連続ジャンプは4回転からのトリプルアクセルかな、と。スコアに関係なく自分がジャンプを楽しんでいる原点的なところです」

羽生の挑戦がルールを変更させた

 それから3年、挑戦者はほとんど現れず、国際スケート連盟は「非常に難度が高く、減点する理由がない」として、引き上げを決定。羽生の挑戦がルールを変更させたのだ。

 では実際にはどんな点になるのか。「4回転トウループ+トリプルアクセル」の基礎点は14点から17.5点に。4季前の羽生のように演技後半に行えば19.25点になる。さらに羽生がショーで降りたことのある「4回転トウループ+トリプルアクセル+トリプルアクセル」は25.5点だ。昨季まで最高点と考えられてきた「4回転ルッツ+3回転トウループ」が15.7点であるから、その破壊力は言うまでもない。

 この他にも、アクセルを含めた様々な組み合わせに挑戦できる画期的なルール改正である。短い助走でトリプルアクセルを跳ぶ練習になるため、4回転アクセルの習得も後押しするだろう。アクセルこそが王様のジャンプ。そう呼べる時代が幕を開けようとしている。

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