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国内最大級の分析ユニット、海外クラブと提携… 東大サッカー部のテクニカルスタッフが語る「Jのクラブにはない強み」とリアルな学生生活
text by
澤田将太Shota Sawada
photograph byNumber Web
posted2022/06/29 11:01
東京大学ア式蹴球部テクニカルスタッフの木下慶悟さん。「きのけい」のペンネームでサッカーメディアに分析記事も執筆している
――秀才ぶりが窺えつつも、等身大の学生らしいエピソードですね(笑)。
「ただ、欲を言えば相手選手の位置がわかるシステムも欲しいですね。GPSをつけるわけにいかないので、今は映像から選手を画像認識させ、位置を落とし込むという作業にも挑戦しています。これらがすべて自動化できたら、選手にデータを解釈して伝えることに注力できるんですよ。いや、今ある機材だけでも十分に贅沢ではあるのですが(笑)」
海外クラブの試合をオンラインでリアルタイム分析
――ア式のテクニカルユニットは、オーストリア2部のFCヴァッカー・インスブルックとパートナーシップを結んでいると伺いました。
「インスブルックのセカンドチームのモラス雅輝監督が、たまたま僕たちの活動を見つけてくれたんです。僕がメインで関わっているわけではないのですが、日本時間の深夜2時にあっちの試合をリアルタイムで分析して、ベンチに伝えたりもしています。今はそうやってオンラインで海外の試合に直接関われるんですよ。
また、当時2年生だった部員が現地に渡ってトレーニングメニューやメソッドを学んで帰ってきました。分析のときに求められる視点でも感じましたが、日本とサッカーへの考え方が全然違うんです。ザルツブルクやライプツィヒ(ドイツ)などラルフ・ラングニック(現オーストリア代表監督)のスタイルをイメージしてもらえるとわかりやすいのですが、『ボールを奪って何秒で攻撃が完結したのか?』『どの位置でボールを奪われて、いつ奪い返したのか?』など、トランジションのデータを重視しています」
――想像以上に本格的な提携で驚きました。
「ヨーロッパのトップレベルではデータ分析にお金を惜しまないですが、日本はまだまだそうじゃない。プロでも分析スタッフを大人数抱えているクラブは少なくて、たぶんア式の20人という規模は日本一大きいのでは……と思います。僕たちはあくまでも部活なので、コストをかけずに多くの人間が動けるのが強みなんです。仮にプロで20人も雇ったらかなりの額になってしまいますから。『マリノスでもできなかったリアルタイム分析が、ア式ならできる』とアドバイザーの杉崎健さん(元横浜F・マリノス、サッカーアナリスト)もおっしゃっていました」