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「『あの人、何ができるの?』と言われてもいい」Jリーグ理事・高田春奈氏が語る“これからの女性リーダー像”「現状は負担が大きすぎる」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTomosuke Imai
posted2022/06/25 11:02
Jリーグ常勤理事の高田春奈氏に、日本サッカー界の課題やジェンダーギャップについて話を聞いた
――スペシャリストでなければならない、と思わなくてもいいと。
「たとえば、サッカークラブの経営者でもサッカーをやっていなかった方はたくさんいますし、私より若い方もいます。実際に自分がその仕事に就いてみて、女性にできないわけではまったくないと感じました。ただ、ビジネス界で活躍している女性の経営者自体が少ないため、当然クラブ経営に携わる女性も少なくなります。加えてJリーグは男性選手のプロリーグ。そもそも関係者も圧倒的に男性が多く、その結果、男性社会が形成されてしまっている部分もあります。私の場合は社長でしたが、どのポジションでも同じで、『女性だからできない』のではなく、単純に機会そのものが少ないんでしょうね」
――だからこそ、何か武器がないと、と考えてしまう……。
「でも、本当は武器がなくてもできるんじゃないか、と。私が社長や理事の仕事をすることで、そう感じてもらえたらいいなというのはあります」
――サッカー界に限らずですが、日本には女性のリーダーが少なく、ジェンダーギャップが大きな課題となっています。
「重要なポストに女性が採用されにくいという事実と同時に、リーダーになるメリットを感じられない女性も少なからずいると思うんです。人によってはあまり前に出たくないという気持ちもあるでしょうし、パートナーの協力があっても出産や育児と仕事を両立するのは大変ですよね。ちゃんとやろうと思えば、あまりにも負担が大きすぎる。だからもっと気楽にチャレンジできるポジションになればいいなと思っていて。『リーダーは強くあらねばならない』という概念にも縛られずに……。周りを引っ張っていくだけがリーダーの役割というわけではありませんから。
たしかに組織のトップや重要なポストというのは面倒な役回りですし、わざわざなりたくないという気持ちもよくわかります(笑)。けれど、なったらなったで助けてくれる人はたくさんいるし、なったからこそ感じられるいいこともたくさんある。もっと多くの女性リーダーが生まれれば社会はよりよい方に変化していく気がしていて、そのために自分ができることがあればいいな、と最近は思います」
小学校卒業と同時に地元を離れ、就職後も父親の会社とは距離をとった。それでも父の元へと戻り、V・ファーレン長崎の社長としてふるさとのために汗をかくことを選んだのは、スポーツを通じて平和への願いを発信したいという強い思いがあったからだろう。Jリーグの常勤理事として、サッカー界や地域社会のために尽力する高田氏の手腕に期待したい。<#1、#2から続く>
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