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「新チームになって初めて負けた」大阪桐蔭の“30連勝”を阻止した智弁和歌山の“小刻みな継投” 夏連覇を目指す中谷監督「まだまだ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2022/05/30 11:06
連勝を伸ばし続けていた大阪桐蔭高校を破り、近畿大会を制した智弁和歌山高校。夏の甲子園連覇へ自信を深める勝利となった
智弁和歌山の中谷監督は、「勝因を挙げるとすれば、ピッチャー陣の踏ん張り。四球を出すことなく、どんどんバッターに攻めていってくれた結果。いい当たりはされていましたけど、なんとか最少失点に抑えられた」と語った。
タイプの異なる複数投手をタイミングよくつぎ込んで前半から中盤を乗り切り、終盤をエース格の投手に託すという継投は、2018年夏に中谷監督が就任して以降、節目の試合で何度か見られた戦い方だ。
だが今回は、「勝つとしたら、というか、勝つことをあまり想定していなかったので思い切れた部分もある。僕たちの力が、現在地が、どこにあるのかという現実を突きつけられる日だと思って入っていきましたから」と言う。
大阪桐蔭を抑えた、という自信
前日の準決勝後には、「智弁和歌山は日本一を目指しているチーム。和歌山の田舎からひと泡吹かせるというか、インパクトづけられるようなチームに、というのは、智弁和歌山である以上いつも思っている」と自負をのぞかせていた。
相手が無敗の大阪桐蔭だからと言って、名前負けしたり、相手を大きく見すぎたりすることはない。だが、現チームは昨秋の県大会準決勝で和歌山東に敗れ、秋の近畿大会にも、センバツにも出場していない。そのせいで現在地を測りかねていた。この決勝は、勝つ可能性を最大限に探りながら、現在地を知るまたとない機会と捉えた。
試合後は、「まあまあなんとかなるところにはいるのかな、というのは感じましたけど、まだまだ。今日の結果がどうのこうのという話ではない」と喜びは控えめだったが、夏に向けて間違いなく大きな勝利だ。
智弁和歌山はこの日の決勝に17人が出場。特に登板した4人の投手にとって、大阪桐蔭と対戦した経験、抑えて勝利した自信は、かけがえのない財産になる。