甲子園の風BACK NUMBER
「新チームになって初めて負けた」大阪桐蔭の“30連勝”を阻止した智弁和歌山の“小刻みな継投” 夏連覇を目指す中谷監督「まだまだ」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2022/05/30 11:06
連勝を伸ばし続けていた大阪桐蔭高校を破り、近畿大会を制した智弁和歌山高校。夏の甲子園連覇へ自信を深める勝利となった
智弁和歌山の先発は、前日の準決勝・報徳学園戦で124球を投げた背番号1の塩路柊季でも、最速148キロの大型右腕・武元一輝でもなく、背番号20の2年生左腕・吉川泰地だった。
吉川が変則的なフォームからの緩急をつけた投球で3回を2失点でしのぐと、4回は右腕の西野宙、5回は左腕の橘本直汰が無失点でつなぐ。どの投手も大阪桐蔭打線にひるむことなく、時に雄叫びをあげながら勢いよく腕を振る。打者の背中の後ろをボールが通るなど、時折コントロールが荒れることもあったが、その荒れ具合もまた大阪桐蔭側の対応を難しくした。チャンスは作るが、あと1本が出ず点数につながらない。強烈な打球は度々外野に飛んだが、智弁和歌山の外野手の守備位置の正確さ、守備範囲の広さも投手を助けた。
目先を変える小刻みな継投が功を奏し、3-2と1点リードのまま迎えた6回、武元がマウンドに上がった。
「リードして武元に渡すことを意識した」
岡西は、先発メンバーを聞いた時の心境をこう振り返る。
「『おー吉川で行くんか』と。吉川で行くってことは、継投で行って、武元につなぐのかなと思ったので、点を取って、武元にリードした場面で渡すことを意識しました」
まさにその通りの展開。武元は武器のストレートで効果的にインコースを突きながら、4イニングを3安打無失点に抑え、1点のリードを守りきった。吉川が1つ死球を出したが、4投手とも四球は0。攻めきった。勝利の瞬間、一番大きなガッツポーズでベンチを飛び出したのは先発した吉川だった。
小刻みな継投にかわされるかたちとなった大阪桐蔭の西谷浩一監督は、「そういうふうに考えて中谷(仁)監督はされたんだと思うんですけど、それになかなか対応しきれなかった。智弁和歌山さんからしたら、こういう試合をしたいなというゲームになって、それを跳ね返すことができなかった。もう少し対応力を身につけないといけない」と静かに悔しさを噛み締めた。