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人格者マタは「クラブの文化をリセットした方がいい」と絶望…時代に取り残されたマンUに未来はあるか? 《レジェンドOBも「かなり深刻な状態」》
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2022/06/01 06:02
今季のリーグ戦では6位に終わり、来季のCL出場権を逃したマンチェスター・U。プレミア随一の名門はかつての強さを取り戻せるだろうか
57失点も喫した守備陣(もちろん、チーム全体の問題だが……)のテコ入れは必要だが、現有勢力を上回るタレントがユナイテッドに興味を持つだろうか。
だからこそ、周囲から学ぶ必要がある。
リバプールの強化プランを参考にすべき
ユルゲン・クロップが監督に就任した当初のリバプールも補強に苦しんだ。彼の慧眼で獲得したモハメド・サラー、サディオ・マネは飛躍的に成長したが、入団直後はファンやメディアの反応は薄かった。にもかかわらずリバプールは、今や史上最強と言われるまでグレードアップしている。
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一方、ユナイテッドはブルーノ・フェルナンデスを除き、大半の補強が失敗している。ポグバはあまりにも気分屋で、ズラタン・イブラヒモビッチ(現ミラン)は盛りを過ぎていた。マッテオ・ダルミアン(現インテル)とメンフィス・デパイ(現バルセロナ)は力不足を露呈し、アントニー・マルシャルはあの様だ。
かつてのライバルを参考にすることが苦渋の選択だとしても、リバプールの強化プランを参考にしなければならない。補強するなら、知名度や実績を問わずに野心にあふれる者、そして下部組織出身の才能豊かな若者を軸に据えて再建すべきだ。
今シーズンのFAユースカップを制したチームは、アレハンドロ・ガルナチョ、アルバロ・フェルナンデス、リース・ベネットなど、まさしく宝の山だ。チャンピオンシップ(実質2部)のノッティンガムにローン移籍のジェームズ・ガーナーは、マイケル・キャリックを彷彿とさせる知的なMFだ。
アメリカ人オーナーは時間と金を浪費するだけ
ユナイテッドのアカデミーは、デイビッド・ベッカム、ライアン・ギグス、ニッキー・バット、ネビル、スコールズなど、“ファーギーズ・フレッジリングス”(ファーガソンのひな鳥たち)の台頭によって、90年代の初頭から20年以上も栄華を極めている。サー・アレックスは、彼らが一人前になるまで辛抱強く見守った。
つまり今回も、目の前の1勝にこだわらず、若手の育成に主眼を置いた中長期の強化策こそが最良のリスタートだ。イブラヒモビッチに「ビジネス色が強すぎる」と批判されたオーナーのグレイザー・ファミリーは、ある程度の時間をテンハフに与えるべきだ。
オールド・トラッフォードにほとんど足を運ばず、ユナイテッドはあくまでも金儲けの手段と捉えているこのアメリカ人オーナーこそが、リバプールを最も研究すべきなのだ。グレイザーは2005年にユナイテッドを買収した後、オーナーらしい所信も表明せずに時間と金を浪費してきた。クラブ創設144年で最大のピンチを迎え、彼らは改心するだろうか。
何も気づかず、オーナーの地位にのうのうと胡坐をかき続けるようなら、C・ロナウドもテンハフも才能豊かな若者たちも、無力感に苛まれるだけだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。