“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
三笘薫は「食」にもストイック? ベルギー生活を支える専属栄養士が驚く“細かい質問”…「苦手なセロリもきちんと食べる、白米は10g単位で」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byMasaki Fujioka/JMPA
posted2022/04/04 11:04
W杯出場が懸かったオーストラリア戦で2ゴールを決めた三笘薫。昨夏から始まった海外生活では「食事」を見直した
「三笘選手は漬物や、セロリなどの香味野菜が苦手ですが、それが自分の体にとって良いもの、必要なものであればきちんと食べるし、白米の食べる量も10g単位で微調整しています。おかわりをする時も、『どれくらいの量なら大丈夫ですか?』などきちんと聞くあたり、とてもストイックな印象を受けますね」
緒方さんはそんな三笘の要求に応えるべく、パーソナルトレーナーとも密な連係を図りながら、一つひとつに耳を傾けているという。「栄養学のエビデンス、その狙いを説明する大変さはある」としながらも、「選手自身が主体性を持って意欲的に取り組むので姿勢は、逆に大きな学びにもなり、自分自身の成長にも繋がっている」と前向きだった。
「90分通してのタフさ、強度も足りない」
こうした密なコミュニケーションを図りながら生活するのも、全ては三笘の目標達成のためだ。
濃いやりとりを継続する中で、「三笘食材」というカテゴリーが出来上がった。“企業秘密”とあって具体的なメニューを明かすことは避けられたが、血液循環や毛細血管の活性化へアプローチしつつ、筋疲労の除去、代謝の促進、免疫力のアップを図る抗酸化が高い野菜をメインにメニューに盛り込んでいるという。
「90分を通してのタフさはまだまだ足りていないですし、強度も全く足りていない。世界の選手はもっと仕掛けられる能力もありますし、守備でもタフに戦えています。そこを求めていますし、もっと伸ばさないと代表にも関わって行けないと思っています」
ベトナム戦後にこう語っていた三笘にとって、武器であるスピードの強度を90分間保てるようなフィジカルの強化、疲労回復のスピードは海外で成功するための大きなファクター。ましてや、世界最高峰のプレミアリーグで活躍するためにはより高い水準が求められる。
実際、三笘はベルギーリーグでも試合を終えるたびに、どこかしら痛みを伴って帰宅することが多いという。打撲は当たり前で「(日本の強度とは)レベルが違う。プレミアに行ったらやばい」という危機感も彼の中で生まれている。
それを栄養面の観点から補給し、さらに定期的に血液検査によって数値を確認するなど、細かいアプローチを施しているのだ。
「今は一気に増量などをせずに、これまでの慣れた身体で現地のスピードに合わせて、そこからタンパク質0.1g単位で細かく調整をして、筋力アップを狙っています。体重を増やすけど、増やしすぎず、微調整をトレーナーさんと他の栄養士さんともグループを組んで取り組んでいます」(緒方さん)