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高梨沙羅のスーツ規定違反で再燃…90年代、スキー競技で「日本を狙ったのでは?」と言われた“2つのルール改正”とは
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2022/03/03 17:03
高梨沙羅も対象となったスキージャンプ混合団体のスーツ規定違反など、今回の北京五輪は“ルール”をいつも以上に意識する大会となった
例えば、従来のルールでは身長が168cmの選手は最長248cmのスキー板を用いることができたのに対し、変更後は、245cmと短くなった。一方で、身長180cmの選手は260cmであったのが263cmまで可能となったのだ。欧州勢と比べれば日本勢が相対的に小柄な選手が多かったこと、そして長野五輪での個人・団体での日本の活躍もあって、ノルディック複合同様、「日本を狙った」という声が上がった。具体的に選手からそうした不満の声を聞いたこともある。
ただ、それが日本の選手全体にただちに影響を及ぼしたかと言えば、そうとは言い切れない。同シーズンのワールドカップでは葛西紀明が6勝したほか、船木和喜が3勝、宮平秀治が1勝を上げている。世界選手権でも、ノーマルヒルで日本勢が表彰台を独占しているし、ラージヒルは宮平が銅メダル、団体でも銀メダルと好成績を残している。
たしかにルールが変わり、数cm短い板を使用しなければいけなくなった選手は適応するのが大変だったことも事実だ。ただ一概に日本を狙い撃ちしたとは言えないだろう。実際に、海外の選手を見ても、173cmとジャンプ界では小柄ながら、2002年ソルトレークシティ、2010年バンクーバーの2大会で金メダリストとなったシモン・アマンのような存在もいる。
ルールに批判はつきものではあるが……
過去の著名な例からすれば、簡単にどこかの国、例えば日本を狙ってのルール改正がなされたのかどうかは言い切れない。また、ジャンプのルール改正についても、当時日本側は公式的に異を唱えなかった。むしろ賛同していたことを踏まえても、「日本を標的に~」と言うのは難しい面がある。
ルールに関しては、幅広い意味で、日本に限らず、さまざまな国で「不公平」「正当ではない」など批判が出ることがある。ルールの設計そして改正には、よりフェアであるように、という観点からのものもあれば、より面白くすることを目的にするなど、いろいろな要素も絡んでくることが、議論をより複雑にしている。
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