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高梨沙羅のスーツ規定違反で再燃…90年代、スキー競技で「日本を狙ったのでは?」と言われた“2つのルール改正”とは
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2022/03/03 17:03
高梨沙羅も対象となったスキージャンプ混合団体のスーツ規定違反など、今回の北京五輪は“ルール”をいつも以上に意識する大会となった
こうした状況のなかで、ジャンプポイントの換算比率が徐々に変更されていく。アルベールビル五輪では1ポイント6.7秒だったのが、リレハンメルでは6.5秒、1998年長野では6秒、2002年ソルトレークシティは5秒、2006年トリノ以降は4秒と徐々に換算比率が下げられていったのだ。この変更によって、日本の必勝パターンは封じられてしまった。
このルール改正について、当時、競技に携わっていた人の中には、強すぎる日本の力を削ぎたい意図だと主張する人もいたし、従来の強豪国が「勝負にならない」状況を変えたかったのではという声も聞こえた。一方で、「ルール改正は前半で勝負が決しないように、試合を面白くするため」という意見もあった。
意図はどうであれ、実際に欧州勢がジャンプ技術の向上も相まって表彰台を独占するようになり、日本はオリンピックにおいては長野以降、徐々に表彰台に上がれなくなる。ルール改正が影響した感は否めないだろう。
ただ、だからこそ2014年ソチ五輪のノーマルヒルで20年ぶりの表彰台となる銀メダルを獲得し、今回の北京五輪まで3大会連続のメダル獲得となった渡部暁斗の功績の凄さがより分かるし、ノルディック団体で28年ぶりに表彰台に上がったことの真価も伝わってくる。
“日本たたき”と呼ばれたスキージャンプ「146%ルール」
スキージャンプにおいても「日本たたき」と言われ、しばしば語られてきたルール改正がある。1998-1999シーズンに導入された、いわゆる「146%ルール」だ。それまで「身長+80cm」以内だったスキー板の長さに関する規定が、身長の146%以内に変更されたものだ。
では、なぜ「身長+80cm」から「身長の146%以内」が日本にとって“不利なルール改正”と言われたのか。