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「まるで刑務所」地獄のPL寮生活、立浪和義を奮い立たせた先輩・清原和博の言葉《8年ぶりキャンプ訪問&人命救助も》 

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小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byKatsuro Okazawa/AFLO

posted2022/03/01 11:01

「まるで刑務所」地獄のPL寮生活、立浪和義を奮い立たせた先輩・清原和博の言葉《8年ぶりキャンプ訪問&人命救助も》<Number Web> photograph by Katsuro Okazawa/AFLO

1985年、夏の甲子園決勝で優勝を決めた際の清原(3年)。この時、1年生立浪はスタンドにいた

《まず飛距離が違う。打球の迫力が違う。硬球が、まるでピンポン球のように糸を引いて空の彼方に吸い込まれて行く。低い弾道で、見えないところまで飛んで行くように見えた》

 プロに入る選手の打撃を目の前で体感し、自分には手の届かない世界だと痛感した。ところが、そんな雲の上の存在から、ある日、こう言われた。「お前、いいバッティングしてるやないか」。萎えかけていた心に火がついた。その時の喜びを「グワンと勢いがついた瞬間だった」と綴っている。

 PL学園の卒業生は、必ず自分が何期生かを把握している。清原さんは31期、立浪監督は33期である。当然ながら、その「所属」は生涯変わらず、戦地から帰還した兵士のように、会えば期をまたいで思いを共有する。

 今回の清原さんの「復帰」は、いわゆる「みそぎ」期間を十分に置いたタイミングで、2期下の立浪監督が就任したことが強い追い風になったのは間違いない。その一方で、球団周辺には訪問受け入れをためらう意見もあった。罪を犯した人間と親密であるというイメージがつくのを警戒したのである。しかし各社の報道によると、立浪監督は清原さんと並んでの共同インタビューを終えた後、わざわざ広報部を通じて追加のコメントを伝えてきたそうだ。

清原氏からメッセージ「今まで生きてきてよかった」

 球場を離れた清原さんからスマホに届いた「本当にありがとう。今まで生きてきてよかった」というメッセージを紹介した上で「今の世の中、頑張っている人に対しても批判する風潮がありますが、必死に前を向いて頑張っている先輩を温かく見守っていただきたいです」と本音を明かしている。

 復帰は早い、そもそもするべきではない……。同じ罪を犯した芸能人だと、復帰時期は各局横にらみになりがちだ。最初にその場を提供すれば話題性は高いが、機を見誤れば批判にさらされる。ましてや視聴率とは関係ないスポーツ界なら話題性よりイメージを重視し、無難に事を運びたくなるものだ。

 再犯率の高い罪でもあり、否定派、慎重論者の言い分は、要するに「そんなやつとは関わるな。得することはない」である。確かにいったん薬物を知った人間が誘惑を断ち切るのがいかに困難なことなのかは、数々の事例が証明している。しかし、それが「関わらない」「縁を切る」ことの理由にはならないと考え、立浪監督は動いた。そんな後輩がさしのべた手の温もりが、この先もずっと続く清原さんの戦いの助けになるかもしれない。そして、今回の「PLの絆」に応えるのも裏切るのも、すべては清原さんの今後の生き方に懸かっている。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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