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ジュニアがシニアより強くなる? フィギュアスケートの年齢制限引き上げ議論が本格化《日本への影響は?》
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2022/02/27 11:04
北京五輪のショートは首位だったが、フリーではミスが続き、4位(暫定)となったワリエワ。演技後は涙が止まらなかった
一方で、日本国内のジュニアカテゴリーの選手から「いついつまでに、このジャンプを跳ばないと」という声も聞かれるようになり、ときに焦燥感や、それがクリアできなければ先はないというような切迫感を感じさせることもあった。自身のキャリアにおいて早々に挫折を味わうこともあるだろう。そうした状況に対し年齢制限が設けられることで、過度な競争からジュニアの選手を守り、競技に対して落ち着いて向き合うことができる状況を作り出せるはずだ。
総じて日本の育成は、無理をして選手をつぶしてしまう弊害を認識している指導者が多いし、経験豊富な指導者であれば一足飛びの飛躍より積み上げていく大切さを熟知している感がある。そういう意味では、年齢の引き上げがなされた場合でも、日本のスケート界にとってはマイナスとはならないのではないか。
いずれにせよ、年齢引き上げが決まれば、競技人生の展望の見直しを迫られる若いスケーターが少なくない。それだけに、6月の総会でどのような結論が導き出されるのか、それに応じてどう仕組みが変わっていくのかは注目されるところだ。
他競技にも波及する低年齢化問題
また、年齢引き上げの問題は、フィギュアスケートに限らない。北京五輪期間中には、フィギュアスケートの年齢引き上げに関連する形で、国際オリンピック委員会(IOC)が主導して、すべての競技について参加年齢の検討を進める意向を表明している。
今まで、オリンピックへの参加資格についての年齢制限の一律の定めはなく、各競技団体に委ねられてきた。フィギュアスケートや体操などのように年齢制限を設けている団体もあれば、東京五輪で若年層の活躍が目立ったスケートボードのような競技もある。若年層をそれぞれの競技がどう受け入れていくか。それによって競技にもたらされる変化をどう捉えるかも、北京五輪を経て顕在化したテーマといえる。
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