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ジュニアがシニアより強くなる? フィギュアスケートの年齢制限引き上げ議論が本格化《日本への影響は?》
posted2022/02/27 11:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
北京五輪の開催期間中、フィギュアスケートのドーピング問題が世間を賑わせたのと同じく、世界からクローズアップされ議論の対象となったテーマがある。「年齢の引き上げ」だ。
カミラ・ワリエワのドーピング問題で、16歳未満が要保護者として扱われる規定があることが広く知られると、シニアとして出場できる年齢と、保護対象である年齢との違いから、大会への出場可能年齢の引き上げを求める意見が現れた。
国際スケート連盟(ISU)も、オリンピック、世界選手権などの大会に参加できる年齢について、現行制度の「前年の7月1日に15歳以上であること」から「17歳」に引き上げる案を6月に開催される総会で検討する方向で調整しているという。
ただ、今回の議論が起こる前から、近年のフィギュアスケートでは、年齢を引き上げるべきという意見が出るようになっていた。それに拍車をかける、あるいは後押しとなった要素としてドーピング問題がある。
15歳が頂点の競技人生
なぜ年齢の引き上げが俎上にあがっていたのか。発端は女子、特にロシア勢の活躍にある。1994年のリレハンメル五輪以降では、トリノ五輪の荒川静香を除き、すべての大会で十代の選手が金メダルを獲得しているように、もともと若い年代の選手が活躍する傾向があった。さらにここ数年はロシアから十代半ばで頂点に立つ選手が相次いだ。平昌五輪を15歳で制したアリーナ・ザギトワは象徴的な存在だ。しかも問題とされているのは、活躍した選手のその後の競技人生が極めて短い傾向が続いていることにある。
こうした傾向が強まる前は、若い年代が台頭する中でも長いキャリアの選手が国際舞台で活躍する例もあった。27歳のとき、ソチ五輪で銅メダルを獲得したイタリアのカロリーナ・コストナー(平昌五輪にも出場し5位)、同じソチに23歳で出場し表彰台には立てなかったが、8つの3回転ジャンプを着氷させるなど記憶に残るフリーを滑った浅田真央。さらには28歳のとき2度目のオリンピックとなるソチ五輪出場を果たし、同シーズンの世界選手権では29歳で6位、日本人最年長入賞を果たした鈴木明子らの名前があげられる。