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15歳ワリエワは加害者でもあり被害者でもある…ドーピング違反で9年後にメダリストになった選手の“涙の告白”「あの時間はもう戻ってこない」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2022/02/20 11:05
ドーピング違反の疑いがある状態で北京五輪フィギュア女子シングルに臨んだ金メダル候補のカミラ・ワリエワだったが、まさかの4位で初の五輪を終えた
IOCのトーマス・バッハ会長はメダルを持ち帰れない米国、日本の選手に聖火トーチをそれぞれプレゼントする、と何とも微妙な代替案を出してきたが、表彰式でメダルをもらって帰国したい、というのが選手の本音だろう。米国のカレン・チェンは、チームメイトと一緒にメダルを貰いたい、とメディアに話した。坂本も団体戦のメダルを選手村の部屋に飾って個人戦への励みにしたい、と語っていた。
選手、関係者それぞれが色々な思いを胸に団体戦に臨み、戦い、掴んだメダル。仲間とメダルを受け取り、喜びを分かち合いたい。その瞬間を心ゆくまで楽しみたい。そう思うのはごくごく当然のことだ。
今大会一緒に戦ったチームメイトと4年後に再び団体戦を戦える保証もない。たとえ4年後に揃ったとしても、北京五輪の喜びの瞬間を取り戻すことはできない。
4位だったカナダの選手はもっと複雑な気持ちだろう。
メダルを貰えるのか、貰えるとしてもいつになるか分からない。メダルを首にかけ、家族や友人、お世話になった人々のもと、出身校に行く。メダリストの栄誉、祝福の言葉を彼らが手にすることができるのか。現時点では全く分からないのだから。
ドーピングで奪われるのは「メダル授与式」だけではない
ドーピングで失格者が出ると、順位が繰り上がった選手たちに金銭的な影響を及ぼすこともある。
今大会、米国、日本、カナダ各国ともにメダリストには報奨金が授与される。日本の場合、五輪委員会、スケート連盟それぞれから、金メダル500万円、銀200万円、銅100万円と設定されている。「メダルの色の違い=金額の差」になる。
ここで、過去の例を紹介したい。
ロンドン五輪の陸上走高跳、ロシア選手が優勝したが、その後、ドーピングで結果が抹消され、米国のカイナードが金メダルに繰り上がった。そのニュースが正式に発表されたのは五輪から9年もの月日が経った昨年11月だった。
カイナードが金メダルだった場合に得られた報奨金、スポンサーからのボーナス、各大会の出場料、様々なイベントへのゲスト出演料などは、1億を超えるだろう。
4位から3位に繰り上がった場合も同様だ。