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15歳ワリエワは加害者でもあり被害者でもある…ドーピング違反で9年後にメダリストになった選手の“涙の告白”「あの時間はもう戻ってこない」
posted2022/02/20 11:05
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
JIJI PRESS
「切なくて悲しい」
女子フリーを見たファンの呟きだ。多くのファンが楽しみにしていた北京五輪女子フィギュアは、とても切なく、涙の多い悲しいものになった。
金メダリスト最有力だったものの自らのドーピング問題の影響もあり4位に終わったカミラ・ワリエワはもちろん、チームメイトのロシア選手、団体戦のメダルを受け取れない選手たち。今大会は多くの選手や関係者に暗い影を落としている。
涙、怒り、無表情…異様な光景に溢れた女子フィギュア
女子フリーの最終滑走。注目のワリエワは、精彩に欠く演技で4位に終わった。リンクでは必死に涙を堪えていたものの、得点を待つ間に涙が溢れ出た。15歳の少女は肩を震わせ、泣きじゃくった。
2位のアレクサンドラ・トルソワは点数に納得がいかず、人目を憚らず悔し涙を流し、優勝したアンナ・シェルバコワは、そんな状況に戸惑い、感情を消した表情で呆然と立ち尽くしていた。
ROCの3選手は全員が五輪初出場で、金メダルへのプレッシャー、そして同門対決のライバル感情もあっただろう。五輪という独特の雰囲気に加えて、ドーピング問題が持ち上がり、彼女たちへは厳しい視線が送られた。
金メダル獲得に喜びの感情を出せないシェルバコワを救ったのは、3位の坂本花織だった。坂本は大きな笑顔でシェルバコワを力強くハグし、演技直後の表彰式でも笑顔でシェルバコワをリードした。一方で、ROCの2選手のギクシャクした雰囲気に、坂本が困っているような様子も見られ、喜びやうれしさを共有できない状況になってしまった。
団体戦のメダルは未だ選手たちに届いていない
ワリエワのドーピング問題は、自身のチームメイトだけではなく、当然ながら同じリンクで戦った他国の選手にも波及し、団体戦の選手たちも被害を受けた。
ワリエワも出場した団体戦では、ROCは1位、それに米国、日本と続いたが、試合後にドーピング問題が発覚したため、表彰式は延期になっている。大会期間中に表彰式が行われるかどうかは未定で、大会期間後に最終決定された場合、メダルは各国五輪委員会に郵送されるという。