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「彼には天から与えられた才能と情熱がある」ショーン・ホワイトが語っていた“あなたにとって平野歩夢とはどんな存在ですか?”
text by
徳原海Kai Tokuhara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2022/02/09 11:01
4年前の平昌五輪。歴史に残る名勝負を繰り広げたショーン・ホワイトと平野歩夢
「僕の目標は、強くなることではなくもっといいスノーボードをすること。だから常に新しい技にトライしたい。その思いこそが自分の心を正しい場所に置いてくれる。五輪が終わった直後の今でさえ、スノーボードに熱中しているよ。大きなプレッシャーがかかる五輪が終わって、ここからしばらくは気軽にトリックにチャレンジしてOKだしね(笑)。それにスケートボードの可能性を考えるのもエキサイティング。東京五輪に向けてどうチームを作ろうか、などと考えながらワクワクしているんだ」
根っからのスノーボーダーが追い求める“2つのこと”
ベテランになってもストイックに勝利にこだわり続ける求道者。日本におけるショーン・ホワイトに対するパブリックイメージもそんな感じだろう。確かに彼は真のアスリートだ。しかし、かつてマイケル・ジョーダンが愚直なまでに勝利を追い求めた姿とはやはり違うし、クリスティアーノ・ロナウドが我こそナンバーワンであると誇示するかのように、ゴールを決め続けることともテイストが異なる。
つまるところ、ショーンは根っからのスノーボーダーだということ。ストリートカルチャーから生まれたスノーボードの本質が“カッコよさ”を追求することだとして、彼にとって、それを表現するステージが大会であるというだけなのだ。コミュニティ意識が強く、また大会には出ずにフリーライディングを主戦場としているトップライダーも多いスノーボード界では、彼の強い競争心や大会重視のスタンスに対して賛否両論がある。でも、ショーン・ホワイトがいなければスノーボードというスポーツがこれほどメジャーになることはなかっただろう。
競技に出続けることとスタイルを作り出すこと。常にその狭間で戦い、両方を突き詰めているのがショーン・ホワイトなのだ。
「なぜ余力を残す必要がある?」挑戦はつづく
「今回の五輪で自分の足跡を残すことができたとは思う。でも、それはスノーボードを楽しみ続けたからもらえたボーナスのようなもの。僕は新しいことに挑むことが好きなだけで栄光がほしいわけではないんだ。ハーフパイプだけでなく、スロープスタイルなどその他の分野においても、そしてスケートボードも、全てにチャレンジし続けたい。なぜ余力を残す必要がある? だって自分自身を高めることが僕の情熱であり、人生に意味を与えてくれることだから」
インタビューの翌日、USオープンで平野は初優勝をおさめた。はたしてショーンはそれを見て何を感じたのだろう。フツフツと、新たに湧き上がるものがあっただろうか。その答えは、もしかしたら2年後に東京で明らかになるかもしれない。
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