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モーグル堀島行真のスゴさは藤井聡太竜王と共通? 14歳から知る元日本代表・伊藤みきが「腰が低くて将棋好き」と語る素顔
posted2022/02/08 17:01
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
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Naoya Sanuki/JMPA,Hiroshi Kamaya
――堀島選手が期待通りに銅メダルを獲得しました。モーグル界のメダルは里谷多英、原大智に次ぐ史上3人目。予選を含めた5回のランをどう振り返りますか?
伊藤 オリンピックは、W杯や世界選手権とのレギュレーションとは少し異なります。普段は決勝2本で競うことが多いですが、オリンピックの場合は準々決勝(20人)→準決勝(12人)→決勝(6人)と決勝ラウンドで3本も滑らなければいけません。
さらにモーグルは点数を持ち越さないため、その都度いい点数を出して勝ち上がっていかないといけないし、一度も失敗も許されない。つまり、選手たちにとってはいつも以上にタフさが求められることになります。その中で堀島選手の滑りは、“1本、1本、しっかりと積み重ねていった”という印象を受けました。
最後まで崩れずに“らしい滑り”を披露できた理由
――堀島選手は予選1回目で準々決勝進出を決められませんでした。
伊藤 W杯などでは予選からミカエル・キングズベリー(銀メダル)といった実力者にプレッシャーを懸けていく試合展開が多かったのですが、オリンピックでは出遅れてしまった。ただ、予選1回目よりも予選2回目、予選2回目よりも準々決勝と、確実に1つずつ階段を上るようにいい滑りができました。当たり前のことのように感じますが、選手目線からすると、前の滑りよりも良い結果を出し続けるのは容易なことではないんです。
しかも予選2回目のファーストエアーでは、堀島選手の時だけ突然、突風が吹くアクシデントもありました。モーグルは小さなミスやアクシデントによって一度焦ってしまうと、取り返しがつかない事態に繋がることが多いです。それでも自分に起きていることと、自分がやらないといけないことを明確に整理できていたからこそ、最後まで崩れずに堀島選手らしい滑りを披露できたのだと思います。
――5回の滑走の中で印象に残ったシーンはありますか?
伊藤 準決勝スタート時の表情ですね。もう少しゆとりを持ってスタートに立つかなと思っていたのですが、とても緊張している様子でした。平昌大会では準決勝で敗れていましたし、「自分の力でこの壁を乗り越える」という強い思いがあったのだと思います。その壁を自分の力で乗り越えた決勝では、5本の中で一番いい表情をしていましたね。
たしかに決勝ではミスもありましたが、エアに干渉しないもの。ミドルセクション(第1エア〜第2エア)に少しバランスを崩した小さなミスだったので、堀島選手のようなベース点が高い選手にとっては痛手にはなりませんでした。何より最後のランで今大会で唯一の23秒台(23.86)とスピードを上げてきた。堀島選手の競技者としての真髄を見たような気がしました。
★堀島行真のスコア(タイム:スピード/ターン/エア)
予選1 74.40(25.38:14.53/46.2/13.67)
予選2 76.19(25.75:14.04/47.6/14.55)
決勝1 77.91(25.20:14.77/48.1/15.04)
決勝2 79.58(25.47:14.41/48.6/16.57)
決勝3 81.48(23.86:16.54/47.4/17.54)