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「楽しむことがメイン」平野歩夢(22)が挑む“専門外”のスケートボード…冬季五輪メダリストが“4番手”でも笑顔で滑り続ける理由

posted2021/08/05 06:00

 
「楽しむことがメイン」平野歩夢(22)が挑む“専門外”のスケートボード…冬季五輪メダリストが“4番手”でも笑顔で滑り続ける理由<Number Web> photograph by Asami Enomoto

「高さやスピード、自分にしかできない魅力的な滑りを伝えられれば」と思いながら滑ったと語った平野

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

PROFILE

photograph by

Asami Enomoto

2014年ソチ五輪、18年平昌五輪のスノーボード・ハーフパイプで2大会連続の銀メダルを獲得した平野歩夢。東京五輪ではスケートボードの「パーク」に出場します。競技を変えて夏季五輪に挑む彼の“原点”に迫った記事を再公開します。(初出:2019年3月19日)

 3月15日、大会前日の鵠沼海浜公園は、平日とあってまだ人影もまばらだった。

 インラインスケートを楽しみにきた大人たちやビギナーズエリアでえっちらおっちら練習するキッズの姿が、湘南の海をバックにのどかな雰囲気を作り出していた。

 そんな風景に溶け込むようにして、平野歩夢は白いTシャツ姿で調整に励んでいた。

 弟の海祝(かいしゅう)らと話しながら、時おり白い歯をのぞかせる。すでに数台のテレビカメラが一挙手一投足を追いかけていたが、それを特別気にするでもない。その表情が雪上にいるときよりもぐっと身軽に感じられたのは、分厚いスノーボードウエアを脱ぎ去ったせいばかりではないように見えた。

 平野の父・英功さんが以前に言っていたことがある。スノーボードの大会に息子を送り出す心境についてだった。

「腕1本、2本の覚悟はしている。命だけは何とか取らないでくれと思っている。今はそういう領域の技をやっているから」

「苦しいことの方が全然上回っている」

 平野自身も同じように考えていた。

「(スノーボードでは)楽しいより苦しいことの方が全然上回っている。楽しくやるんだったらコンテストライダーではいられない。楽しさ以上に自分を追い詰めてまでやらなきゃいけない部分を感じている」

 実家が地元でスケートパークを運営していたため、4歳からまずスケートボード、それからスノーボードを始めた。

 初めから大それた目標があったわけではない。子供の戯れに始まり、カッコよくなりたい、もっと高く跳びたい、あこがれの選手と戦いたい、と段階を踏んで成長してきただけだった。

【次ページ】 「楽しむ」余地が、スケートボードには残っている

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