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「美しさもスペクタクルもない、リアリズムの勝利だ」トルシエが中国戦に見た“日本の自力突破”の可能性と大一番サウジ戦の課題
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/01/31 17:00
中国のクラブでも監督経験を持つトルシエ。直接指導した選手もいたが、中国とのレベルの違いは明らかだと言い切った
日本は完璧に支配してシュートも数多く打ち得点チャンスも作り出した。その攻撃の多くは右サイドから生まれた。とりわけ伊東のプレーが光り、彼はチャンスメーカーであっただけでなく、セットプレーでも重要な役割を果たした。また大迫の献身も目立った。ボールをうまく引き出して、伊東や他の選手とのコンビネーションで中国のディフェンスに穴を開けた。
後半に入っても中国のフィジカルと運動能力は衰えなかったが、日本は総合力で中国を凌駕し、試合を完ぺきにコントロールして素晴らしい勝利を得た。オーストラリアがベトナムに4対0と快勝した状況での負けられない戦いで、とても大きな勝利だった。日本はやるべきことをやった。これ以上のものは求められない。けが人が続出する難しい状況で勝ち点3を獲得したのだから」
――それはその通りだと思います。
「観客もいつもと違っていた。試合中もずっと歌い続け、彼らも試合に積極的に参加していた。謙虚で慎み深い日本のサポーターというよりも、まるでヨーロッパのスタジアムのような熱狂的な雰囲気だった。彼らの果たした役割もとても大きかった」
――そこはちょっと違って、放送の演出と音響効果だと思います。実際はコロナのため観客数は制限されて、チャントも声を出しての応援も禁止されてスタジアムはとても静かでしたから。
「そうか。まあそれはいい。
ただ、日本はしくじることなく目的を達成した。スタートから試合終了まで高い集中力を保ち続けた。中国はフィジカルと運動能力では対抗できたしデュエルでも力を発揮したが、戦術的には不十分で危険はまったくなかった。シュートは2本だけだろう。極めて順当な結果だ。予選突破に向けて、日本はこれからも戦い続けることができる」
伊東は重要な役割を果たしていた
――後半は選手交代で試合のリズムが多少変化しましたが、それでも最後までゲームをコントロールしました。
「全員が試合に参加していた。選手が代わってもプレーに大きな変化はなかった。中国が1点を返したらすべてが覆る状況だったが、反撃の余地をまったく与えなかった。日本はその点で本気で、本当に真剣にプレーしていた」