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中村俊輔はサンプドリアに入るはずだった? 名波浩や柳沢敦獲得の敏腕は今やインテル復活の立役者 <新たな日本人発掘目指すSDも> 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2022/02/01 17:00

中村俊輔はサンプドリアに入るはずだった? 名波浩や柳沢敦獲得の敏腕は今やインテル復活の立役者 <新たな日本人発掘目指すSDも><Number Web> photograph by AFLO

2003年にサンプドリアに移籍した柳沢敦。日本人のセリエA挑戦には敏腕ディレクターの存在があった

 現場に専念するようになったマロッタはモンザやラヴェンナといった地方クラブを渡り歩きながら、移籍市場で切った貼ったをくり返してきた。逸話には事欠かない。

「78年の移籍市場のホテルに、警察が介入してきたことは忘れられない。会場の窓という窓から契約書類をつめたアタッシュケースが(証拠隠滅のために)何個も放り投げられたのを、この目で見たよ」

 当時、クラブ同士が決めたトレードに対して、選手に拒否権はなかった。これに憤った選手会が司法当局に告発したところ、保有権の違法売買等の疑いで裁判所命令を受けた警察が選手取引の真っ最中にガサ入れを強行した。移籍市場はそのまま凍結され、再開には当時のジュリオ・アンドレオッティ内閣の介入を必要としたほどの大騒ぎになった。

携帯電話がない時代のテクニックとは?

 個別の案件を除けば、イタリアの移籍市場はホテルを借り切って大々的に催されるのが年2回の風物詩だ。

 まだ携帯電話がない時代、市場にはライバルを出し抜くテクニックがいくつかあった。

 あるとき、編成上余るFWをどうしても売りたいマロッタは、会場の一角で、クラブAと交渉中のライバル同業者Bの姿を見つけた。事もあろうにBも自クラブのFWをクラブAに売りつけようとしている――。

 一計を案じたマロッタは、ホテルのフロントへ踵を返し、お願いをした。

「B様、B様、急ぎのお電話が入っております。至急フロントまでお越しください」

 呼び出しの館内放送にBが席を外した瞬間、マロッタはまんまと割り込み、抜け目なく話をまとめてしまった。本人の告白によれば、そんな荒業は1度や2度ではないらしい。

「25歳以上の選手の完全自由化解禁」を提唱

 時は流れ、あらゆることがデジタル化した21世紀の移籍市場では、データの乗っ取りに警戒しなければならない、とマロッタはぼやく。

「それに今は、移籍をすればするほど選手が儲かる時代だ。だから、選手が移籍に関してクラブ側にああしろ、こうしろと要求してくるようになったが、この状況は間違っている」

 マロッタは移籍市場の将来的な『25歳以上の選手の完全自由化解禁』を唱えている。

「映画ごとに出演契約を結ぶ俳優のように25歳以上の保有権をフリーにする。そうすれば無謀な投資競争は避けられ、全体的な人件費コストは下がるはずだ」

 マロッタは実際にその手法を実践に移して、ユベントス時代の11年にMFアンドレア・ピルロや12年のMFポール・ポグバ(現マンチェスター・U)、13年のFWフェルナンド・ジョレンテ(現エイバル)など、スビンコラート(契約満了)と呼ばれる即戦力の移籍金フリー選手を獲得して大成功を収めてきた。

【次ページ】 「いい日本人の若手を、ぜひ紹介してくれないか」

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