セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
中村俊輔はサンプドリアに入るはずだった? 名波浩や柳沢敦獲得の敏腕は今やインテル復活の立役者 <新たな日本人発掘目指すSDも>
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2022/02/01 17:00
2003年にサンプドリアに移籍した柳沢敦。日本人のセリエA挑戦には敏腕ディレクターの存在があった
今冬にはゴセンスの獲得にも成功
昨夏も、優勝したインテルからFWルカク(現チェルシー)とDFハキミ(現パリSG)を1億8千万ユーロ以上で売却しつつ、ミランの10番MFハカン・チャルハノールやローマの大黒柱FWジェコを移籍金ゼロで獲り、当座収支の大幅黒字と戦力維持を両立させるという離れ業をやってのけた。
今冬には、近年のアタランタ躍進を担ったリーグ屈指のサイドプレーヤー、DFゴセンスの獲得に成功した。半年レンタルの後、買取義務つきで総額2500万ユーロという移籍劇は、買い手も売り手も納得のオペレーションだ。
着々とインテルを自分色に染めつつある智将シモーネ・インザーギも、スクデット連覇実現に向け、真面目で得点力を持つゴセンス加入を喜ばないはずがない。
国外からの大型オファーに競り勝てたのも、マロッタが長年培った人徳の賜物だろう。一方、黄金時代を築いた立役者マロッタをインテルという仇敵に回したことを心底悔やむユベンティーノは数多いはずだ。
「いい日本人の若手を、ぜひ紹介してくれないか」
64歳のマロッタはウディネーゼの寝業師SDマリーノ(67歳)やサレルニターナの曲者SDワルテル・サバティーニ(66歳)らと並ぶ、業界最古参の強化担当者だ。最も古株だが、最も老獪で最も手際がいい。
交渉ごとは公明正大にやる一方でスキを見せず注意深く進めること。
交渉相手には真摯であること。
これは、マロッタが経験から導き出した移籍市場でのルールだ。
そんなマロッタの古巣サンプドリアでは今季開幕後、吉田がSDカルロ・オスティから「いい日本人の若手を、ぜひ紹介してくれないか」と頼まれたと明かしている。吉田は冷静にEU外選手登録枠の壁を指摘したようだが、日本人選手というだけで色眼鏡で見られた20年前と比べれば、隔世の感がある。
まだまだレアな存在ではあるけれど、実際に日本人選手たちと仕事をしてきたフロントの人間たちは、カルチョの現場に着実に増えている。
EU外選手登録枠となってでも獲りたい。日本に縁深いマロッタに限らず、カルチョの国の強化担当者たちは、そう思わせる日本人選手の出現を待っている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。