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格闘技PRESSBACK NUMBER
格闘技界の分裂、旬を過ぎたカード…那須川天心vs武尊を実現した榊原信行が噛みしめる“苦い経験”「許すところから始めるしかない」
posted2022/01/16 17:04
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Susumu Nagao
もう10年近く日本のキックボクシング界に漂っていたモヤモヤとした空気が吹き飛んだ。そう感じているのは筆者だけではあるまい。すべては今年6月にやることが決まった那須川天心vs武尊のおかげだ。世紀のビッグマッチ実現のため、仲介に入った株式会社ドリームファクトリーワールドワイドの榊原信行代表も「スッキリした」と胸を撫で下ろした。
「(K-1とRISEを)とてつもなく離れた距離にいるところから近づけていく。この1年で動いたという話もしているけど、このカードを組むために、実は数年レベルで時間も労力も調整事や根回しのために割いていました」
キック界のモヤモヤとした空気の正体、それはK-1はK-1として、RISEはRISEとして、それぞれに別個の世界があり、ひとつにまとまる気配が全くなかったことに尽きる。対岸にあるボクシングが羨ましくて仕方なかった。ボクシングはボクシングという競技として認知され、まとめて語ることができるではないか。対照的にキックボクシングや立ち技格闘技は、団体やルールごとに語らないといけない。
決して交わらなかったK-1とRISE
なぜそんなことになったかといえば、業界のツートップとして君臨するK-1とRISEが交流する機会をずっと持たなかったからだろう。RIZINでも、両団体の接点はなかった。2015年12月、RIZINの旗揚げ2連戦にはK-1から武尊とHIROYAが参戦。翌16年9月の『RIZIN.2』では木村“フィリップ”ミノルがMMAに挑戦しているが、その後は交流が途絶えた。
そんなK-1と入れ代わるように、RIZINにはRISE系のキックボクサーが登場するようになった。2016年12月には那須川がMMA2連戦を行なっている。両雄、並び立たず。一時代前は状況が明らかに違う。旧K-1を創設した石井和義氏はK-1ブームに乗り、日本キック界を事実上統一した。立嶋篤史や小野寺力のようにヒジ・ヒザありのトラディショナルなキックにこだわり、K-1に背を向けた者もいたが、各団体の多くの日本チャンピオンたちはK-1出場を目指した。