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格闘技PRESSBACK NUMBER
格闘技界の分裂、旬を過ぎたカード…那須川天心vs武尊を実現した榊原信行が噛みしめる“苦い経験”「許すところから始めるしかない」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2022/01/16 17:04
がっちりと握手を交わす那須川天心と武尊。会見ではそれぞれ格闘技界の団結と発展を願うコメントを残した
榊原はPRIDE時代から「組めるわけがない」と思われていたマッチメークに何度も携わってきた。当時人気絶頂だった高田延彦が、“400戦無敗の男”ヒクソン・グレイシーとバーリトゥード(現在のMMA)で闘うという『PRIDE.1』で組まれた一戦は、その最たるものだろう。あの一戦がなければ、昨今のMMAの繁栄はない。
だからこそ「選手も生身の人間。旬は時間とともに過ぎていく」ということを痛感している。
「誰々と闘いたいというファイターの気持ちは、政治的な問題が解決した数年後に『じゃあやろう』というわけにはいかない」
苦い過去から榊原が得た教訓とは
苦い過去もある。中でも複数回オファーを出しながら、PRIDE時代に実現できなかった田村潔司vs桜庭和志に対しては、いまでも忸怩たる思いが残る。PRIDE最後の興行となった2007年4月の『PRIDE.34』で榊原は両者をリングに呼び、夢の対決が実現するように呼びかけた。
「PRIDE時代にもう一歩二歩踏み込んでいれば、旬なときにあのカードを実現することができた。結局田村vs桜庭は翌年のDREAMでやることになるじゃないですか。旬を過ぎた後にね(田村の判定勝ち)。PRIDEの最後にふたりをリングインさせたけど、そこまでできたのなら、やっぱりPRIDEのリングでやらせたかった」
チャンスは一期一会。機会を逸した選手に「まだチャンスはあるよ」とセコンドや仲間が慰めるケースもあるが、田村vs桜庭戦を組めなかったなどの反省から、榊原は「そう思ったときにはもう遅い」と感じている。
「だから大事な試合は、旬なときにやっておかないといけない」
モヤモヤとした空気など、もういらない。<前編から続く>