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格闘技界の分裂、旬を過ぎたカード…那須川天心vs武尊を実現した榊原信行が噛みしめる“苦い経験”「許すところから始めるしかない」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2022/01/16 17:04

格闘技界の分裂、旬を過ぎたカード…那須川天心vs武尊を実現した榊原信行が噛みしめる“苦い経験”「許すところから始めるしかない」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

がっちりと握手を交わす那須川天心と武尊。会見ではそれぞれ格闘技界の団結と発展を願うコメントを残した

「2003年の大晦日は、地上波も何だかわけがわからない状態で格闘技三つ巴みたいな形になってしまった。地上波も節操がないと思ったけど、それを作り出した根本の原因は格闘技界にある。みんなが裏をかこうとしていた。それまではひとつになってやれていたのに、本当に見苦しかった」

――あのとき、格闘技界が分裂した最大の理由は?

「誰かひとりだけ得をしようとするからバラバラになるんですよ。だったら1年に1回くらい、みんなで力を合わせてやればいい」

「100億円儲かったら、みんなできれいに分ければいい」

 今回は再び力を結集する、いい機会だと捉えている。

「例えば6月のイベントで100億円儲かったら、関わった人たちみんなでその100億円をきれいに分ければいい。お金の流れはガラス張りにしてオープンにする。K-1とRISEをその気にさせて、こっちでドッカーンと売り上げて利益を抜いてやろう。そんな不埒なことを考えていたら、僕は両団体の間に挟まっていないですよ」

 ピースフルでクリーンなイベント運営。その先にK-1、RISE、RIZINの明るい未来を見据えての行動だ。

「僕らプロモーターが未来を描けないのなら、この一戦はやめるべきなんですよ。やらない方がいい。この試合が次のK-1にとってもRISEにとっても未来につながると思うから組む。もちろん僕はRIZINの未来を考える。それぞれの未来にとって、何が大切なのかを最優先に考えないといけない」

 榊原は交渉を重ねていく中で各団体に温度差があったことを認める。しかし、これから先のことを考えたら諦めるわけにはいかなかった。

「天心は『僕はボクシングで自分の未来を目指すから、これからの格闘技界はみんなで頑張って』というスタンスでしょう。個人の未来を考えたら、それは当然。彼の未来に僕らはパートナーとしていない。だったら天心vs武尊を実現させなくてもいいのか。確かに僕らはこの一騎討ちが実現しなくてもその先の未来で自分のレピュテーション(評判)を戻せるし、それ以上のカードを作っていく努力をすればいい。

 ただ、天心vs武尊は、これだけの価値がついているカードですからね。後にそれを実現できなかった伊藤隆(RISE代表)と榊原というふうに受け取られたら、みんなションボリじゃないですか。ずっとついてきてくれたファンは、この先も期待しようとは思わない。だったら何としても実現させるべきだと思いました」

【次ページ】 苦い過去から榊原が得た教訓とは

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