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「今年は特にレベルが高かった」春高バレーで『ハイキュー!!』世代の高校生が見せた2つの“アップデート”と“大人たちの課題”とは?
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/11 06:00
初出場の日南振徳高校でエースを務めた甲斐優斗。2mの高さを武器に、巧みにスパイクを打ち分けた
そして、運営面に目を向ければ、いくつも課題が見えてくる。以前から準決勝が女子、男子の試合順であるにもかかわらず、翌日の決勝は男子、女子の順で開催される不可解な日程が疑問とされてきた。ようやく今大会は決勝の試合順に合わせて準決勝も男子、女子の順で開催された。
だが、今大会でも疑問が残ったのが3回戦とベスト8を懸けた準々決勝が同日に行われる大会3日目。1試合目の勝利校と3試合目の勝利校、2試合目の勝利校と4試合目の勝利校がそれぞれ5、6試合目で対戦する日程だが、1、2試合目を勝利した相手が十分な休息、食事、対策時間があるのに対し、3、4試合目に勝利したチームは準々決勝までインターバルは1時間半程度しかない。
3回戦でフルセットの末に勝利し、準々決勝でもフルセットで高松工芸との激闘を制した鎮西の畑野久雄監督(76歳)も「かなり不利だと思った」と本音を漏らしていたほどだ(※高松工芸の3回戦は11時スタート、鎮西は13時10分スタート。15時30分には準々決勝が始まる香盤だった)。
そもそもこれほどまでに個々のレベルが上がり、ハイレベルな戦術に取り組み、バレーボール自体が進化を遂げれば当然ながら体力面の負担は大きい。1日に2試合行うこと自体に疑問符がつき、ましてや今年のように5日間で最大6連戦という日程に異論が出てもおかしくないことは、冷静に考えなくてもわかる。
もとをたどれば、試合時間やコートが決まっているのは2回戦までで、3回戦以降は対戦カードによって試合順やコートが決まる。その日のダイジェスト放送を含め、テレビ局の都合が優先されるのは明らかで、無観客開催ではない一昨年までは全校応援の首都圏校が1回戦からメインコートで試合が行われるのに対し、地方の出場校はサブコートや6、7試合目に組まれるのも当たり前だった。
確かに華やかなライトやオレンジコートが選手にとって“憧れ”であることが揺らがないのは、主催するテレビ局があってこそ。地上波で放映されることは競技、大会としても大きなメリットがある。だが、選手ファーストではなく、いまだ運営側の事情が色濃く見えるのも事実だった。
始業式との兼ね合いや、地方から出場するチームの遠征費用を考慮した結果であるとはいえ、連戦が続けば終盤に脚が攣る選手が増えるのも当然で、明らかにパフォーマンスは落ちる。複数会場に分けることや、必ず休息日を設けること、週を分けた実施など、真の“アスリートファースト”を実現するために、再考する余地はあってもいい。
これほどまでにハイレベルなバレーボールを見せてくれた高校生たちの明るい未来のために――指導者、審判、運営、メディア、そして自分自身も含め、大人たちのアップデートが必要だ。そんな時代に突入したことを予感させる大会だった。