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《春高バレー最長身210cm》体をぶつけるのが嫌で…サッカー少年だった牧大晃がバレーボールと出会った日「変われたのは淵崎先生のおかげ」
posted2022/01/13 11:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
AFLO SPORT
1月9日に幕を閉じた春の高校バレーで、大会史上最長身210cmのアウトサイド・牧大晃(ひろあき/高松工芸高3年)は、ベスト8で姿を消したが、今年も印象に残る姿を見せてくれた。
インターハイ王者の鎮西高と対戦した準々決勝は、鎮西高の2年生エース舛本颯真を、牧がブロックで封じ、豪快にスパイクで得点を重ね第1セットを奪ったが、第2セット中盤からは舛本が息を吹き返し、逆転されて敗れた。
最後は、牧が大きな体を投げ出して懸命に拾い、対角を組む2年生・多田來生(らい)がスパイクを打ち込んだが、ブロックに捕まりゲームセットとなった。
牧は、込み上げてくる涙を一旦こらえて、うつむく多田に駆け寄り、「よう勝負した」と次期エースの肩をたたいた。
「今までああいうトスが上がってきた時に、あいつ(多田)は打たなかったんですけど、あの時は勝負した。ブロックにはかかったけど、成長できているのかなと思ったので、『最後、よう勝負した。来年もこの舞台に連れていけよ』というプラスの声かけをしました」
その行動とコメントに、内気だった牧の3年間の成長が凝縮されていた。
頼もしい牧の姿に「感動しました」
同級生のミドルブロッカー・乙武空良(そら)は、試合後こう話した。
「鎮西も牧にトスが上がるとわかっていて、3枚ついてきたけど、それでも牧は絶対打ちきっていた。これまでにない『絶対決めてやろう』っていう気持ちが見れて、すごい感動しました」
だが牧は敗戦の責任を背負いこんだ。
「自分が最後打ちきれなかった。そこが悔しかったです。相手のエース(舛本)は、打ちきるということにすごい執着を持っていたし、頭を使いながらプレーしていて、自分には足りないすごいものを持っているなと感じた。どれだけブロックが来ても打ちきっていたし、向こうのほうがハードワークをしていた。2年生ですけど、尊敬しないといけないなと感じました」
ミックスゾーンで話す牧の前にはテレビカメラがズラリと並んだ。210cmという日本バレーボール界に類を見ない長身、しかも大型選手のイメージを覆すしなやかな動きでサーブレシーブもこなすアウトサイドとして、注目を集め続けた。だがどれだけ注目されても、牧は天狗になることも勘違いすることもない。もう少し自信を持ってもいいのに、と思わされることもあるほどだ。